ペットボトルのリサイクル‐都市環境サービス

皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「ペットボトルのリサイクル」です。日々何気なく使って捨てているペットボトル、その後どうなっているか気になったことはありませんか?

PP・PE(ポリプロピレン・ポリエチレン)のリサイクル,都市環境サービス

実はペットボトルは、正しくリサイクルすることで再び私たちの生活に戻ってくるんです。ゴミとして処理するのはもったいない!本記事では、ペットボトルのリサイクルフローについて、回収から再生品になるまでの流れを詳しく解説していきます。

目次は以下の通りです。

 

① ペットボトルってどんなもの?
② ペットボトルリサイクルの全体像
③ ペットボトルのリサイクルフロー
④ ペットボトル再生品の新たな用途

ペットボトルってどんなもの?

私たちの生活に欠かせないペットボトル。飲み物を入れるプラスチック容器として毎日のように使っていますが、その特徴や素材について詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。

ペットボトルの特徴と構造

ペットボトルはプラスチック素材でできています。軽くて丈夫、透明で中身が見えやすく、密閉性が高いという特徴を持っています。また、衝撃に強く割れにくいため、持ち運びにも便利です。

ペットボトルは主に以下の3つの部分からできています。

・本体となるボトル部分
・開け閉めするためのキャップ部分
・商品情報などが印刷されたラベル部分

実は、これらは異なる素材でできているんですよ。ボトル本体はPET樹脂でできていますが、キャップはポリプロピレン(PP)、ラベルはポリエチレン(PE)やポリスチレン(PS)といった別の種類のプラスチックが使われていることが多いです。

このように複数の素材でできているため、リサイクルの際にはそれぞれ分けて処理する必要があります。ペットボトルをリサイクルに出す際にキャップとラベルを外すよう言われるのは、このためなんです。

ペットボトルの素材構成を示す図解。ボトル本体はPET樹脂、キャップはポリプロピレン(PP)、ラベルはポリエチレン(PE)でできている。

60万トンのペットボトル

日本では年間約60万トンものペットボトルが消費されていると言われています。これは一人あたり年間約400本以上にもなります。毎日どこかでペットボトルを使っている計算になりますね。

 

特に飲料用のペットボトルが多く、清涼飲料水やお茶、ミネラルウォーターなどに広く使われています。近年では環境への配慮から、薄くて軽いエコボトルも増えてきました。ボトルの厚みを薄くすることで、原料の使用量を減らし、環境への負荷を少なくする取り組みが進んでいるんです。

 

ただ、便利な反面、使い捨てされることが多いペットボトルは環境問題の一因ともなっています。海洋プラスチック問題や埋立地の不足など、私たちの生活を脅かす問題にもつながっているんですよ。

リサイクルの必要性

ペットボトルは自然界ではほとんど分解されず、そのまま捨てると何百年も残り続けてしまいます。焼却すれば灰になりますが、その過程で多くのCO2が発生し、地球温暖化の原因になってしまいます。

 

リサイクルすることで、新たな石油資源を使わずに済み、CO2の排出も抑えられます。また、ゴミとして処理する量も減らせるので、埋立地の寿命を延ばすことにもつながります。

 

リサイクルしたペットボトルからは、新しいペットボトルだけでなく、衣類や文房具、家具など様々な製品が作られます。例えば、25本のペットボトルで1枚のフリースジャケットが作れるんですよ。資源を有効活用するためにも、ペットボトルのリサイクルはとても重要なんです。

25本のペットボトルから1枚のピンク色のフリースジャケットが作られる様子を示すイラスト。

ペットボトルリサイクルの全体像

ペットボトルのリサイクルは、私たち消費者が分別して出すところから始まり、いくつもの工程を経て新しい製品に生まれ変わります。その全体の流れを見ていきましょう。

 

リサイクルの流れ

ペットボトルのリサイクルは大きく分けて、「収集」→「選別」→「処理加工」→「再商品化」という流れで進みます。

 

まず私たち消費者がきちんと分別して自治体の回収に出したペットボトルは、回収業者によって集められ、リサイクル工場へと運ばれます。工場では人の手と機械を使って丁寧に選別され、異物が取り除かれます。

 

次に洗浄され、細かく砕かれて「フレーク」と呼ばれる小さな破片になります。このフレークは、そのまま製品の原料として使われるか、さらに加工されて「ペレット」という粒状の再生原料になります。

 

最後に、これらの再生原料を使って様々な製品が作られるわけです。全工程を通して品質管理が行われ、安全で高品質な再生品が作られるよう徹底されています。

日本のリサイクル率

日本のペットボトルリサイクル率は世界的に見ても非常に高く、約85%以上と言われています。これは欧米諸国と比較しても高い水準で、日本の分別収集システムが世界的に評価されている理由の一つです。

 

日本では1995年に容器包装リサイクル法が制定され、法律によってペットボトルの回収とリサイクルが義務付けられました。それ以降、自治体や企業、消費者が一体となって取り組んできた結果、リサイクル率は年々向上しています。

 

しかし、まだ15%程度は適切にリサイクルされておらず、燃やされたり埋め立てられたりしています。また、回収されたペットボトルの一部は海外に輸出されており、国内での資源循環がさらに進むと良いですね。

リサイクルの種類

ペットボトルのリサイクル方法には大きく分けて「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の2種類があります。

マテリアルリサイクルは、物理的な処理によってペットボトルを再生する方法です。ボトルを洗浄して砕き、熱で溶かして新たな製品の原料にします。このプロセスが最も一般的で、環境への負荷も比較的少ないとされています。

 

一方、ケミカルリサイクルは化学的な処理を行います。ペットボトルを化学反応によって分解し、元の原料に戻してから再び製品化する方法です。より純度の高い再生材料が得られますが、コストがかかるため、特殊な用途に限られています。

 

最近では「ボトルtoボトル」と呼ばれる、使用済みペットボトルから再び飲料用ペットボトルを作る水平リサイクルも増えてきています。これは資源の循環という観点で理想的なリサイクル方法と言えるでしょう。

ペットボトルのリサイクルフロー

ペットボトルのリサイクルは、まず家庭や企業から出されたボトルを回収するところから始まります。この初期段階がリサイクル全体の品質を左右する重要なポイントです。

①ペットボトル回収

ペットボトルの回収方法は大きく分けて「自治体による回収」と「事業者による自主回収」の2つがあります。

 

自治体による回収は、各家庭が分別して出したペットボトルを市町村が収集するシステムです。地域によって回収頻度や出し方のルールは異なりますが、基本的には指定の日時に指定の場所に出すことになっています。

 

一方、事業者による自主回収は、飲料メーカーやスーパー、コンビニなどが自主的に回収ボックスを設置し、消費者が持ち込んだペットボトルを回収する方法です。

ペットボトルリサイクル回収

事業所での回収では、主にプレスパッカーという車両を用いることが多いです。プレスパッカーは、ペットボトルを回収する際に使用される特殊な車両です。通常、12立方メートルの容量を持ち、大量のペットボトルを一度に回収できます。

 

プレスパッカーは車両の後部に圧縮装置が付いており、回収したペットボトルをその場で圧縮できます。これにより輸送効率が大幅に向上し、一度の走行でより多くのペットボトルを回収することが可能になるんです。

②異物チェックと選別作業

ペットボトルリサイクル 異物チェック

回収されたペットボトルは、リサイクル工場に到着後、まず異物が混入していないかチェックされます。これは非常に重要な工程で、異物が混ざったままだとリサイクル製品の品質が低下してしまうからです。

 

以下の点をチェックする作業員がライン上で丁寧に確認していきます。

 

他のプラスチック製品が混ざっていないか
中身が残っていないか
キャップやラベルが付いたままになっていないか
金属やガラス、異物が混入していないか

 

この選別作業は一部自動化されてきていますが、最終的な確認は人の目で行われることが多いです。作業員の経験と技術がリサイクル品質を支えているんですよ。

 

選別が終わったペットボトルは、色別に分けられることもあります。透明なボトルは再生PET樹脂の原料として高い価値を持ちますが、色付きボトルは用途が限られるため、分けて処理されることが多いんです。

③圧縮梱包機での処理

ペットボトルリサイクル 投入

ペットボトルリサイクル 投入②

選別されたペットボトルは、大型の圧縮梱包機へと投入されます。この圧縮梱包機は、500kgほどのペットボトル(約12,500本分!)を一度に処理することができる大型の機械です。

 

圧縮梱包機は約150トンもの圧力をかけて、大量のペットボトルを小さなブロック状に圧縮します。これを「ベール」と呼び、リサイクル業界では標準的な形状として扱われています。ベール1個は持ち上げられないほど重く、フォークリフトなどの重機で運搬する必要があります。

 

圧縮することで体積が約1/10になるため、保管スペースを節約でき、また輸送効率も大幅に向上します。まさにリサイクルの効率化に欠かせない工程と言えるでしょう。

④サイコロ状に加工

ペットボトルリサイクル サイコロ状に加工

圧縮されたペットボトルは、次にサイコロ状(キューブ状)に整形されます。これは見た目だけでなく、標準化された形にすることで品質管理や輸送をしやすくするためです。

 

サイコロ状に加工されたペットボトルのブロックは、大きさが均一になるため積み重ねやすく、倉庫での保管や輸送トラックへの積載が効率的に行えます。また、形が整っていることで、次工程の処理機械に投入する際もスムーズに行えるんですよ。

 

この工程では、プレス機の金型を変えることで、様々な大きさや形に成形することができます。リサイクル工場の設備や、次工程の処理方法に合わせた形に加工するのが一般的です。

⑤品質チェック

 

ペットボトルリサイクル 倉庫で品質チェック

サイコロ状に加工されたペットボトルは、倉庫に運ばれて品質チェックが行われます。ここでは、以下のような項目が確認されます。

 

・異物の混入度合い
・色の均一性
・圧縮状態
・水分量
・汚れの程度

 

これらの検査結果に基づいて、品質ごとに分類して管理されます。高品質なものは食品容器などの高付加価値製品に、やや品質の落ちるものは繊維製品や工業用部品などに使われることになります。

 

このように、用途に応じた品質管理が徹底されることで、再生ペットボトル製品の信頼性が確保されているんです。

⑥出荷

10トントラック1台分(約20万本のペットボトル)がまとまったタイミングで、次の工程を担当するボトルメーカーへと出荷されていきます。

ペットボトルリサイクル 出荷

選別・圧縮されたペットボトルは、次に本格的なリサイクル処理工程へと進みます。ここでは洗浄から始まり、最終的に新しい製品として生まれ変わるまでの工程を見ていきましょう。

⑦フレーク化処理

再生工場に運ばれたペットボトルは、まず粉砕機にかけられ、小さな破片(フレーク)に砕かれます。フレークとは5mm程度の小さな破片のことで、リサイクルペットの基本的な中間材料となります。

 

粉砕機では高速で回転する刃によって、ペットボトルが細かく砕かれていきます。この工程でペットボトルの体積はさらに小さくなり、次の洗浄工程がより効率的に行えるようになります。

 

フレーク状にすることで表面積が増え、汚れが落ちやすくなるというメリットもあります。粉砕の粒度は製品の品質に大きく影響するため、目的の製品に応じて調整されるんですよ。

⑧洗浄・選別工程

フレーク化されたペットボトルは、次に洗浄工程へと進みます。ここでは特殊な洗浄液を使って、ラベルや接着剤の残り、飲料の残留物などの汚れを徹底的に洗い落とします。

 

洗浄と同時に、水の中での比重の違いを利用した選別も行われます。ペットボトル本体(PET樹脂)は水より重いため沈み、キャップやラベル(PP・PE樹脂)は水より軽いため浮きます。この性質を利用して、自動的に材質ごとに分離することができるんです。

 

洗浄・選別工程は以下のステップで行われます。

 

1.温水と洗剤による予備洗浄
2.こすり洗いによる汚れの除去
3.すすぎ洗い
4.比重分離による異素材の除去
5.最終洗浄

 

こうして得られた清潔なPETフレークは、次の乾燥工程へと送られます。洗浄されたPETフレークは、水分を完全に除去するために乾燥機にかけられます。適切な乾燥は、次の工程でのペレット化や成形時のトラブルを防ぐために非常に重要です

⑨品質検査

乾燥後のフレークは、厳しい品質検査が行われます。特に以下の項目がチェックされます。

 

・水分量(含水率が高すぎると後の工程で問題が発生)
・不純物の混入度合い
・色調
・粒度分布
・溶融特性

 

これらの検査に合格したフレークは、そのまま製品の原料として出荷されるか、さらにペレット化されて再生ペレットとなります。ペレットはフレークを溶かして小さな粒状にしたもので、プラスチック成形の標準的な原料形態です。

 

最終品質検査を通過したリサイクルPET原料は、ボトルメーカーや成形メーカーに出荷され、様々な製品に生まれ変わっていくのです。

ペットボトル再生品の新たな用途

リサイクルされたペットボトルは、様々な製品として私たちの生活に戻ってきます。その用途と社会的意義を見ていきましょう。

再生ペットボトルの用途

リサイクルされたペットボトルの再生材料は、驚くほど多くの製品に使われています。主な用途としては以下のようなものがあります。

 

繊維製品:ポリエステル繊維として衣類、カーペット、バッグなど

食品容器:卵パック、果物トレイなど

文房具:クリアファイル、下敷き、定規など

工業部品:自動車部品、電気製品の部品など

日用品:掃除用具、収納ケースなど

建材:断熱材、防音材などに

 

特に注目されているのが「ボトルtoボトル」と呼ばれる、使用済みペットボトルから再び飲料用ペットボトルを作る水平リサイクルです。技術の進歩により、リサイクル原料から作られたボトルでも、新品と変わらない品質のものが作れるようになっています。

 

日本のリサイクル技術は世界トップレベルで、再生ペットボトル材料の純度も高く、様々な高品質製品に使用されています。海外では道路の舗装材や公園のベンチなど、屋外用途にも広く使われているんですよ。

ペットボトルリサイクル 新しいペットボトルに生まれ変わる

環境への貢献

ペットボトルのリサイクルは環境保全に大きく貢献しています。具体的には以下のような効果があります。

 

・CO2削減
リサイクルペットボトル1トンを生産すると、バージン(新品)材料を使う場合と比べて、約3トンのCO2排出削減になると言われています。

 

・石油資源の削減
ペットボトルのリサイクルは、限りある石油資源の消費を抑えることにもつながります。ペットボトルの原料は石油由来なので、リサイクルすることで新たな石油資源の使用を減らせるんです。

 

・海洋プラスチック問題の解決
適切に回収・リサイクルされたペットボトルは海に流れ出ることがなく、海洋生物への悪影響を防ぐことができます。

 

・埋立地の延命
リサイクルによって埋立地に捨てられるゴミの量も減り、埋立地の延命にもつながります。

 

このように、資源の有効活用と環境保全、両方の面からペットボトルのリサイクルは大きな意味を持っているんです。

私たちにできること

私たち一人ひとりができるペットボトルのリサイクル協力は以下のようなことです。

 

キャップとラベルを外し、中を軽くすすいでから分別する

つぶして出すことで収集効率を上げる

決められた日時・場所に出す

できるだけリサイクル素材を使った製品を選ぶ

 

特に最初の分別が重要で、私たちが正しく分別して出すことが高品質なリサイクルの第一歩になります。リサイクルマークを見て正しく分別するよう心がけましょう。

 

また、使い捨てのペットボトルをなるべく使わないようにするマイボトルの活用も大切です。使うなら、リサイクル素材を使った製品を選ぶことで「循環型社会」の構築に貢献できます。小さな行動の積み重ねが大きな環境保全につながるんですよ。

まとめ

ペットボトルのリサイクルフローについてお話してきました。私たちが毎日何気なく使い、捨てているペットボトルが、実はさまざまな工程を経て新しい命を吹き込まれていることがおわかりいただけたでしょうか。回収から選別、加工処理を経て、再び私たちの生活に戻ってくる、このリサイクルの輪は私たち一人ひとりの協力があってこそ成り立っています。

 

特にペットボトルは比較的リサイクルしやすいプラスチックであり、正しく処理すればほぼ100%再利用できる貴重な資源です。環境問題が深刻になる中、プラスチックの正しいリサイクルはますます重要になっています。次にペットボトルを手に取ったとき、キャップとラベルを外して、中をすすいで、つぶして出すという小さな行動から始めてみませんか?一人ひとりの行動が、地球の未来を変える第一歩になるかもしれません。

 

最後まで、読んでいただき光栄です。私たち都市環境サービスは、プラスチックリサイクルに特化した会社です。プラスチックの廃棄や燃料化に興味がある方、リサイクルの会社で働いてみたい方は、こちらのフォームから気軽にお問合せください。よろしくお願いします。

都市環境サービス,プラスチックリサイクル,前田 隆之