皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「フラフ燃料のリサイクル」です。プラスチックリサイクルの過程で、どうしてもマテリアルリサイクルできないプラスチック廃棄物が発生することをご存知でしょうか?従来はこれらを燃やしたり埋め立てたりしていましたが、それではあまりにももったいない!
実はリサイクルできなかったプラスチックも、適切な処理により代替燃料として新たな価値を生み出すことができるんです。単なる廃棄物として処理するのはもったいない!本記事では、フラフ燃料のリサイクルフローについて、受け入れから代替燃料になるまでの流れを詳しく解説していきます。
目次は以下の通りです。
① フラフ燃料ってどんなもの?
② フラフ燃料リサイクルの全体像
③ フラフ燃料のリサイクルフロー
④ フラフ燃料の新たな用途
フラフ燃料ってどんなもの?
フラフ燃料とは、マテリアルリサイクルできなかったプラスチック廃棄物を原料として作られる代替燃料のことです。環境に配慮した廃棄物処理方法として注目されていますが、その特徴や製造過程について詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
フラフ燃料の特徴と構造
フラフ燃料は、リサイクルできなかったプラスチック廃棄物を細かく砕いて成形した固形燃料です。硬質プラスチックと軟質プラスチックを適切な比率でブレンドすることにより、安定した燃焼特性を持つ燃料として生まれ変わります。従来は埋め立てや単純焼却処理されていた廃棄物に、新たな価値を与える画期的な技術なんです。
フラフ燃料の原料となるプラスチック廃棄物は主に以下のようなものです。
・汚れが落ちないプラスチック容器
・複数素材が混ざった製品
・壊れたり古くなったプラスチック
・異物が混じったもの
・色が混ざって品質が悪いもの
フラフ燃料の構造は、25mm以下の大きさに均一に砕かれたプラスチックチップを、硬質プラと軟質プラの最適な比率でブレンドし、プレスラッピングにより圧縮成形したものです。この工程により、安定した発熱量と燃焼特性を持つ固形燃料が完成します。
従来は「ゴミ」として処理されていたプラスチック廃棄物が、適切な前処理と成形工程を経ることで、石炭や重油の代替燃料として活用できる貴重なエネルギー資源に変わるんです。これこそが循環型社会の実現に向けた重要な技術といえるでしょう。
リサイクルできないプラスチックの現状
プラスチックリサイクルの現場では、どうしてもマテリアルリサイクルに適さない廃棄物が一定割合で発生します。汚れが除去できないもの、複数の素材が複合されているもの、劣化が進んでいるものなど、技術的・経済的にリサイクルが困難な廃棄物です。
これらのプラスチック廃棄物は従来、燃やしたり埋め立てたりする処理方法しかありませんでした。しかし、燃やすだけでは熱エネルギーを有効活用できず、埋め立てでは貴重な土地資源を消費してしまいます。何より、プラスチックが持つエネルギーポテンシャルを活かせないのはもったいないことです。
近年の環境意識の高まりと技術の進歩により、これらの「リサイクルできないプラスチック」も貴重な資源として見直されるようになりました。適切な処理技術により代替燃料として活用することで、資源の有効利用と環境負荷の軽減を同時に実現できるようになっています。
代替燃料としての価値
フラフ燃料は石炭や重油の代替燃料として高い価値を持っています。プラスチックは石油由来の素材であるため、高い発熱量を持ち、安定した燃焼特性を示します。適切に製造されたフラフ燃料は、従来の化石燃料と同等かそれ以上のエネルギー効率を実現できるんです。
特に製紙業界やセメント業界では、大量の熱エネルギーを必要とする製造工程があり、フラフ燃料は重要な代替エネルギー源として活用されています。石炭の価格変動や供給リスクを軽減する効果もあり、産業界からの需要も高まっています。
また、フラフ燃料の利用により、廃棄物の最終処分量を大幅に削減できます。埋立地の延命効果や、CO2排出量の削減効果も期待できるため、環境保全と経済性を両立した理想的なリサイクル手法として注目されています。資源循環型社会の実現に向けて、フラフ燃料は重要な役割を果たしているんです。
フラフ燃料リサイクルの全体像
フラフ燃料のリサイクルは、マテリアルリサイクルできなかったプラスチック廃棄物を受け入れるところから始まり、いくつもの工程を経て代替燃料として生まれ変わります。その全体の流れを見ていきましょう。
リサイクルの流れ
フラフ燃料のリサイクルは大きく分けて、
「受け入れ」→「手作業選別」→「破砕・ブレンド」→「成形・計量」→「出荷」
という流れで進みます。
まずマテリアルリサイクルに適さないプラスチック廃棄物が当社フラフ工場に持ち込まれます。工場では手作業による丁寧な異物除去と硬質プラ・軟質プラへの分別が行われ、その後専用の破砕機で25mm以下の大きさに砕かれます。
破砕された硬質プラと軟質プラは最適な比率でブレンドされ、プレスラッピング工程で圧縮成形されます。最終的に重さを計量して品質を確認し、国内製紙メーカーやセメントメーカーに代替燃料として出荷されるのです。
全工程を通して品質管理が行われ、安全で高品質な代替燃料が作られるよう徹底されています。特に燃焼特性や発熱量については、厳格な品質基準をクリアした製品のみが出荷されます。
日本の代替燃料利用状況
日本では製紙業界やセメント業界を中心に、プラスチック由来の代替燃料の利用が拡大しています。特にセメント製造では、焼成工程で大量の熱エネルギーが必要となるため、フラフ燃料のような代替燃料への需要が高まっています。
製紙業界でも、ボイラー燃料として石炭や重油の代替としてプラスチック由来燃料の利用が進んでいます。価格の安定性とエネルギー効率の高さから、多くの企業が導入を検討しています。また、カーボンニュートラルの観点からも、化石燃料の使用量削減につながる代替燃料への注目が集まっています。
しかし、まだ利用可能なプラスチック廃棄物の一部しか代替燃料として活用されておらず、今後さらなる利用拡大が期待されています。技術の向上と品質安定化により、より多くの産業分野での活用が可能になってきています。
エネルギー回収の種類
プラスチック廃棄物からのエネルギー回収方法には大きく分けて「固形燃料化」と「油化・ガス化」の2種類があります。
固形燃料化は、プラスチック廃棄物を物理的に破砕・成形してフラフ燃料などの固形燃料を製造する方法です。比較的シンプルな工程で製造でき、既存の燃焼設備での利用が可能なため、最も実用化が進んでいる手法です。当社でもこの方法を採用しています。
一方、油化・ガス化は化学的な処理を行います。プラスチック廃棄物を高温で分解して燃料油やガスを製造する方法です。より純度の高い燃料が得られますが、設備投資が大きく、技術的な課題もあるため、まだ限定的な利用にとどまっています。
最近では「サーマルリサイクル」という考え方が普及してきており、プラスチック廃棄物が持つエネルギーを最大限に活用する取り組みが進んでいます。これは資源循環という観点で非常に重要なアプローチと言えるでしょう。
フラフ燃料のリサイクルフロー
フラフ燃料のリサイクルは、まずマテリアルリサイクルに適さないプラスチック廃棄物を受け入れるところから始まります。この初期段階がフラフ燃料の品質を左右する重要なポイントです。
①フラフ工場への収集
他の工場でリサイクルできなかったプラスチックごみを、フラフ工場に集めます。ここでは種類別に分けて保管され、次工程での手作業選別に向けた準備が行われます。屋内保管により、雨水による汚染や風による飛散を防いでいます。
保管エリアでは、硬質プラスチックと軟質プラスチックを分けて積み上げます。これにより、後の手作業選別を効率化し、フラフ燃料の品質向上にもつながります。適切な保管管理により、原料の劣化を防ぎ、安定した品質の燃料製造を可能にしているんです。
この段階では、まだ異物や不適切な材料が混入している可能性があるため、次工程の手作業選別に向けた準備段階として位置づけられます。
②分別
保管されたプラスチック廃棄物は、次に手作業による丁寧な異物除去と硬質プラスチック・軟質プラスチックへの分別工程に進みます。
硬質プラスチックは、ペットボトルや容器など固くて丈夫なプラスチック製品のことです。一方、軟質プラスチックはビニール袋やフィルムなど柔らかくて薄いプラスチック製品のことです。
この工程では、燃料として不適切な材料を確実に除去し、高品質なフラフ燃料の原料を準備します。
硬質プラスチックと軟質プラスチックの分別作業では、材料の硬さや厚み、形状などを確認して正確に分類します。この分別精度がフラフ燃料の品質に大きく影響するため、経験豊富なスタッフが担当しています。
手作業による選別は時間がかかりますが、機械では判別困難な微細な異物や不適切な材料を確実に除去できる重要な工程です。この丁寧な前処理により、安全で高品質なフラフ燃料を製造できるんです。
④破砕・ブレンド
手作業で分別されたプラスチック廃棄物は、次にフラフ工場の専用破砕機で25mm以下の大きさに砕かれます。この粒径は代替燃料として最適な燃焼特性を実現するために重要な要素です。均一なサイズに破砕することで、安定した燃焼と高い燃焼効率を実現します。
破砕された硬質プラスチックと軟質プラスチックは、最適な比率でブレンドされます。硬質プラは高い発熱量を持ち、軟質プラは燃焼の安定性を向上させる役割があります。この絶妙なバランスにより、石炭や重油に匹敵する高品質な代替燃料が完成するんです。
⑤プレスラッピング・軽量
ブレンドされた原料は、次にプレスラッピング工程で圧縮成形されます。
プレスラッピングにより成形されたフラフ燃料は、重さを正確に計量して品質を確認します。規定の重量と品質基準をクリアした製品のみが、国内製紙メーカーやセメントメーカーに代替燃料として出荷されます。
⑥出荷
出荷先では、フラフ燃料が石炭や重油の代替として、ボイラーや焼成炉で燃焼されます。製紙工場では紙の乾燥工程で、セメント工場ではセメント焼成工程で、重要なエネルギー源として活用されています。従来の化石燃料と比較して、安定した発熱量と燃焼特性を示し、コスト削減効果も高く評価されているんです。
フラフ燃料の新たな用途
フラフ燃料として生まれ変わったプラスチック廃棄物は、様々な産業分野で代替燃料として活用されています。その用途と社会的意義を見ていきましょう。
フラフ燃料の主な用途
フラフ燃料は、高い発熱量と安定した燃焼特性により、様々な産業分野で代替燃料として使われています。主な用途としては以下のようなものがあります。
製紙業界:
ボイラー燃料として紙の乾燥工程で使用
・
セメント業界:
焼成炉燃料としてセメント製造工程で使用
・
化学工業:
プロセス燃料として各種化学製品の製造で使用
・
電力業界:
火力発電所での石炭代替燃料として使用
・
鉄鋼業界:
高炉や転炉での補助燃料として使用
・
廃棄物処理業界:
焼却炉での補助燃料として使用
特に製紙業界とセメント業界では、大量の熱エネルギーを安定して供給する必要があるため、フラフ燃料は重要なエネルギー源として位置づけられています。石炭や重油と比較して価格変動が少なく、安定調達が可能な点も高く評価されています。
日本の代替燃料技術は世界トップレベルで、フラフ燃料の品質も高く、海外からの引き合いも増えています。特に環境規制が厳しい欧州諸国では、日本の技術を参考にした代替燃料製造が検討されているんですよ。
環境への貢献
フラフ燃料の利用は環境保全に大きく貢献しています。具体的には以下のような効果があります。
・CO2削減効果
フラフ燃料1トンを石炭の代替として使用すると、約0.8トンのCO2排出削減効果があると言われています。
・化石燃料の使用量削減
フラフ燃料の利用により、石炭や重油などの化石燃料の消費を抑えることができます。限りある地下資源の節約と、エネルギー安全保障の向上にもつながります。
・廃棄物の最終処分量削減
従来は埋立処分されていたプラスチック廃棄物を燃料として活用することで、最終処分場の延命効果があります。特に体積の大きいプラスチック廃棄物の削減効果は顕著です。
・資源循環の促進
マテリアルリサイクルできないプラスチック廃棄物も、エネルギーとして回収することで完全な資源循環を実現できます。廃棄物ゼロエミッションの達成に大きく貢献しています。
このように、資源の有効活用と環境保全、エネルギー安全保障の確保、すべての面からフラフ燃料の利用は大きな意味を持っているんです。
私たちにできること
私たち一人ひとりができるフラフ燃料リサイクルへの協力は以下のようなことです。
プラスチックごみを正しく分けて業者に相談する
・
汚れた容器も燃料にできないか聞いてみる
・
リサイクルできないものも資源だと考える
・
代替燃料を使った商品を選んで買う
・
燃料リサイクルの大切さを人に伝える
特にマテリアルリサイクルに適さないプラスチック廃棄物であっても、フラフ燃料として価値ある資源になることを理解することが重要です。「リサイクルできないから廃棄物」という考えから、「エネルギーとして活用できる資源」という認識に変えることで、より完全な循環型社会を実現できます。
まとめ
フラフ燃料のリサイクルフローについてお話してきました。従来は「ゴミ」として処理されていたプラスチック廃棄物が、実は貴重なエネルギー資源として生まれ変わることがおわかりいただけたでしょうか。手作業での分別から破砕・ブレンド・成形を経て、代替燃料として新たな価値を生み出す、この資源循環の輪は私たち一人ひとりの理解と協力があってこそ成り立っています。
特にフラフ燃料は、マテリアルリサイクルという1次的なリサイクルができないプラスチック廃棄物に対して、エネルギー回収という2次的な価値を与える重要な技術です。燃やしたり埋めたりするだけではもったいない廃棄物を、石炭や重油の代替燃料として有効活用することで、真の循環型社会に近づくことができます。
また、製紙業界やセメント業界などの基幹産業において、安定したエネルギー供給と環境負荷軽減を同時に実現するフラフ燃料の役割は、今後ますます重要になってきます。リサイクル事業を通じて、環境・社会・経済の三つの側面から価値を創出することができるのです。次にプラスチック廃棄物を見かけたとき、それが単なるゴミではなく、貴重なエネルギー資源になり得ることを思い出してみてください。一人ひとりの意識の変化が、持続可能な社会の実現への第一歩になるかもしれません。
お知らせ
最後まで、読んでいただき光栄です。私たち都市環境サービスは、プラスチックリサイクルに特化した会社です。フラフ燃料の製造や代替燃料に興味がある方、リサイクルの会社で働いてみたい方は、こちらのフォームから気軽にお問合せください。よろしくお願いします。