環境マネジメントシステム(EMS)とは?仕組みと取り組み方を解説

皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「環境マネジメントシステム(EMS)」です。企業が環境に配慮した取り組みを進めていると聞いたことはありませんか?

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実は多くの企業が、EMSという仕組みを使って環境保全に取り組んでいるんです。単なるエコ活動ではなく、計画的に環境負荷を減らしていく経営の仕組みなんですよ。本記事では、EMSの基本から具体的な取り組み方まで、わかりやすく解説していきます。
目次は以下の通りです。

 

① EMSの基本
② EMSの仕組み
③ EMS規格の種類
④ 各規格の違い
⑤ 導入のメリット
⑥ 導入のデメリット
⑦ 導入の進め方
⑧ 企業の取り組み事例

 

EMSは企業の環境保全活動を支える重要な仕組みです。ぜひ最後までご一読ください。

EMSの基本

環境マネジメントシステムについて、まずは基本的な内容から見ていきましょう。

EMSとは何か

EMS(Environmental Management System)は、日本語で環境マネジメントシステムといいます。企業や団体が環境保全に取り組むための仕組みのことなんです。

 

具体的には、環境に関する方針や目標を自ら決めて、それを達成するための体制や手順を整えることを指します。単に「ゴミを減らそう」「電気を節約しよう」と呼びかけるだけではなく、組織全体で計画的に環境への負荷を減らしていく取り組みなんですよ。環境省では、組織が自主的に環境保全に関する取り組みを進めるための体制・手続き等の仕組みと定義しています。

なぜ必要なのか

企業活動は、どうしても環境に影響を与えてしまいます。製造過程でエネルギーを使ったり、廃棄物を出したり、二酸化炭素を排出したりするんです。

 

地球温暖化や資源の枯渇など、環境問題が深刻化している今、企業には環境への責任が求められています。EMSを導入することで、企業は自社の環境への影響を把握し、計画的に減らしていくことができるんですよ。また、持続可能な経営を実現するためにも、環境に配慮した事業活動が欠かせなくなっています。

ISO14001

EMSの仕組み

EMSがどのように機能するのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。

PDCAサイクル

EMSの中心にあるのが、PDCAサイクルという考え方です。これはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったものなんです。

 

まずPlanで環境目標を設定し、計画を立てます。次にDoで計画に沿って活動を実施します。そしてCheckで結果を評価し、目標が達成できたか確認するんです。最後にActionで問題点を改善し、次の計画に反映させます。このサイクルを繰り返すことで、継続的に環境パフォーマンスを向上させていくことができるんですよ。

環境方針と目標

EMSでは、組織のトップが環境方針を明確にすることが求められます。これは「私たちの会社はこういう姿勢で環境保全に取り組みます」という宣言のようなものなんです。

 

その方針に基づいて、具体的で測定可能な環境目標を設定します。例えば「電力使用量を前年比5%削減する」「廃棄物のリサイクル率を80%以上にする」といった数値目標を掲げるんですよ。曖昧な目標ではなく、達成できたかどうかがはっきりわかる目標にすることが大切なんです。

EMS規格の種類

EMSには様々な認証規格があります。代表的なものを紹介していきましょう。

ISO14001

ISO14001は、国際標準化機構(ISO)が定めた環境マネジメントシステムの国際規格です。世界中で最も広く認知されている環境認証なんですよ。

 

この規格を取得すると、国際的に環境に配慮した経営をしていると認められます。大企業を中心に多くの企業が取得しており、国内では約2万社以上が認証を受けています。官公庁の入札では評価基準になることも多く、ビジネス上のメリットも大きいんです。ただし、取得には専門的な知識が必要で、費用も相応にかかります。

エコアクション21

エコアクション21は、環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステムです。ISO14001を参考にしながらも、中小企業が取り組みやすいように工夫されているんですよ。

 

認証・登録事業者数は約7,900社を超えており、その約90%が従業員100人以下の事業者なんです。二酸化炭素排出量、廃棄物排出量、水使用量という3つの環境負荷項目を必ず把握することが求められます。ISO14001と比べて費用が安く、取り組みやすいのが特徴です。

その他の規格

エコステージは、5段階のステージに分かれた環境マネジメントシステムです。自社のレベルに合わせて段階的に取り組めるため、無理なく環境経営を進められるんですよ。

 

KES(Kyoto Environmental Management System)は、京都で誕生した地域発の規格です。シンプルで低コストをコンセプトにしており、審査員が一緒に検討してくれるという特徴があります。地域の特性を活かした柔軟な運用が可能なんです。このように、企業の規模や目的に応じて様々な選択肢があります。

各規格の違い

それぞれの規格には、どのような違いがあるのでしょうか。比較してみましょう。

費用面の比較

認証取得にかかる費用は、規格によって大きく異なります。従業員100人規模の企業を想定した場合、エコアクション21は初回認証費用が約30万円程度です。

 

一方、ISO14001の初回認証費用は100万円を超えることが多いんです。維持費用も、エコアクション21は2年ごとに約30万円、ISO14001は年間50万円程度かかります。中小企業にとっては、この費用の差は大きな判断材料になるんですよ。ただし、費用が高い分、ISO14001の方が国際的な認知度や信頼性は高くなっています。

取得難易度

取得の難しさも規格によって違います。エコアクション21は、文書の様式や基準が決められているため、初めての事業者でも構築しやすいんです。

 

ISO14001は、文書の様式や基準を独自で作成しなければならず、専門知識が求められます。また、ISO14001は審査時に助言・指導ができないのに対し、エコアクション21は審査員が助言してくれるんですよ。審査の申し込みから認証取得までの期間も、エコアクション21の方が短く済む傾向があります。

認知度と信頼性

認知度では、ISO14001が圧倒的に高いです。国際規格であるため、海外取引先からの信頼も得られやすいんですよ。

 

エコアクション21は国内規格のため、海外での認知度は高くありません。ただし、国内の中小企業間の取引では十分に通用します。実際、環境配慮を取引条件とする企業も増えており、エコアクション21を取得していれば対応できることが多いんです。また、自治体によっては補助金制度を設けているところもあります。

導入のメリット

EMSを導入すると、どんな良いことがあるのでしょうか。主なメリットを見ていきます。

企業価値の向上

環境に配慮した経営をしていることを証明できるため、企業のブランドイメージが向上します。消費者や投資家から高く評価されるようになるんですよ。

 

また、大企業の多くがサプライチェーン全体での環境配慮を求めているため、認証を取得することで新たな取引機会が広がります。実際に、ISO14001などの認証が入札条件になっているケースも増えているんです。環境への取り組みが、ビジネスチャンスにつながる時代になっています。

コスト削減

環境目標を達成する過程で、エネルギー使用量や廃棄物の削減に取り組むことになります。これが結果的に、電気代や廃棄物処理費用の削減につながるんですよ。

 

例えば、照明をLEDに替えたり、製造工程を見直したりすることで、大幅なコストダウンが実現できた企業も多いんです。環境に優しい取り組みが、同時に経営の効率化にもなるというわけなんですね。長期的に見れば、導入費用を上回る経済的メリットが得られる可能性があります。

法令順守

EMSでは、環境に関する法令や規制を把握し、それを遵守する仕組みを作ることが求められます。これにより、法的なリスクを回避できるんです。

 

万が一、法令違反をしてしまうと、罰金や営業停止などの処分を受ける可能性があります。それだけでなく、企業の社会的信用も大きく損なわれてしまうんですよ。EMSを導入することで、そうしたリスクを未然に防ぐことができます。法令遵守は、企業の社会的責任を果たすことにもつながるんです。

EMS導入のメリット

導入のデメリット

良いことばかりではありません。導入する際の課題も理解しておきましょう。

初期コスト

認証を取得するには、審査費用や登録料がかかります。先ほど述べたように、ISO14001では100万円以上、エコアクション21でも30万円程度の初期費用が必要なんです。

 

さらに、EMSを構築するための人件費も発生します。担当者を配置したり、従業員への研修を実施したりする必要があるんですよ。中小企業にとっては、この初期投資が大きな負担になることもあります。ただし、自治体によっては補助金制度を利用できる場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。

運用の負担

認証を取得した後も、定期的に書類を作成したり、審査を受けたりする必要があります。環境活動レポートの作成など、事務作業の負担が増えるんです。

 

また、内部監査を実施したり、従業員への教育を継続したりする手間もかかります。通常業務と並行して行うため、従業員の負担が大きくなることもあるんですよ。形だけのEMSにならないよう、実効性を保ちながら運用していくことが重要です。

導入の進め方

実際にEMSを導入する際の流れを、段階ごとに説明していきます。

準備段階

EMSを導入する際に必要な準備は以下になります。

 

現状の把握
規格の選定
予算の確保
体制の検討

 

まず、自社の環境への影響を調査します。どんな環境負荷があるのか、どこを改善すべきかを明確にするんです。次に、企業の規模や目的に合った規格を選びます。

 

ISO14001を目指すのか、エコアクション21にするのか、この段階で決めておくことが大切なんですよ。同時に、認証取得にかかる費用を見積もり、予算を確保します。経営層の理解と協力を得ることも、この段階で必要になります。

構築段階

EMSの構築に必要な作業は以下になります。

環境方針の策定
環境目標の設定
組織体制の整備
手順書の作成

トップが環境方針を決定し、具体的な環境目標を設定します。そして、誰がどの役割を担うのか、組織体制を明確にするんです。

 

環境活動を実施するための手順書やマニュアルを作成します。例えば、廃棄物の分別方法、エネルギー使用量の測定方法などを文書化するんですよ。従業員への教育も実施し、全員がEMSを理解できるようにします。この段階で、しっかりした基盤を作ることが重要です。

認証取得

認証取得の流れは以下になります。

審査の申込み
書類審査
現地審査
認証の取得

審査機関に申し込みをし、構築したEMSの書類を提出します。書類審査で問題がなければ、審査員が実際に現地を訪れて審査を行うんです。

 

審査では、EMSが規格の要求事項を満たしているか、実際に機能しているかを確認されます。審査に合格すれば、認証を取得できるんですよ。認証取得後も、定期的に審査を受けて更新していく必要があります。継続的な改善を続けることが、EMSの本質なんです。

EMS導入のステップ

企業の取り組み事例

実際にEMSを導入している企業の例を見て、具体的なイメージを掴みましょう。

製造業の例

ある機械製造会社では、ISO14001を取得し、製造工程での電力使用量削減に取り組んでいます。照明を全てLEDに交換し、古い設備を省エネ型に更新したんです。

 

その結果、年間で電力使用量を12%削減することに成功しました。電気代も大幅に下がり、初期投資を3年で回収できたんですよ。また、廃棄物の分別を徹底し、リサイクル率を85%まで高めることができました。こうした取り組みが評価され、新規取引先の開拓にもつながっています。

サービス業の例

物流会社では、エコアクション21を取得し、配送車両の燃費改善に力を入れています。エコドライブの研修を実施し、運転方法を見直したんです。

 

また、配送ルートの最適化により、走行距離を減らすことにも成功しました。これにより、二酸化炭素排出量を前年比8%削減できたんですよ。オフィスでも、紙の使用量を減らすためにペーパーレス化を進めています。業種に合わせた工夫をすることで、着実に環境パフォーマンスを向上させているんです。

まとめ

環境マネジメントシステム(EMS)は、企業が計画的に環境保全に取り組むための仕組みです。PDCAサイクルを回しながら、継続的に環境への影響を減らしていくことができます。
I

 

SO14001やエコアクション21など、企業の規模や目的に応じた様々な規格があるんです。初期費用や運用の負担はありますが、企業価値の向上やコスト削減など、多くのメリットが得られます。

 

環境問題への対応は、もはや企業にとって避けて通れない課題です。EMSを導入することで、環境に配慮しながら持続可能な経営を実現できるんですよ。あなたの会社でも、できることから始めてみませんか。

お知らせ

最後まで、読んでいただき光栄です。私たち都市環境サービスは、プラスチックリサイクルに特化した会社です。フラフ燃料の製造や代替燃料に興味がある方、リサイクルの会社で働いてみたい方は、こちらのフォームから気軽にお問合せください。よろしくお願いします。

都市環境サービス,プラスチックリサイクル,前田 隆之

出典:

[1] 環境省. 環境マネジメントシステム. https://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/04-1.html