皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「アクリル樹脂とプラスチックの違い」です。透明な製品を見て「これはアクリル?それともプラスチック?」と疑問に思ったことはありませんか?

実は、アクリル樹脂はプラスチックの一種なんです。でも、一般的には別物として扱われることが多いんですよ。本記事では、アクリル樹脂とプラスチックの関係性や特徴、身近な使用例まで詳しく解説していきます。
目次は以下の通りです。
①アクリル樹脂とは
②アクリル樹脂とプラスチックの違い
④アクリル樹脂の特徴
⑤アクリル樹脂の長所
⑥アクリル樹脂の短所
⑦身近な使用例
⑧似た素材との違い
素材の特性を理解すれば、製品選びや環境への配慮もより深まります。ぜひ最後までご一読ください。
アクリル樹脂とは
アクリル樹脂は、透明で美しい見た目が特徴的な合成樹脂です。正式名称は「ポリメチルメタクリレート(PMMA)」といいます。この名前は化学式から来ているのですが、一般的には「アクリル」や「アクリル樹脂」と呼ばれることがほとんどなんですよ。
アクリル樹脂が実用化されたのは1934年のことです。当初は軍事用途として、戦闘機の風防(キャノピー)に使用されました。ガラスを上回る透明性と高い耐久性を持っていたため、パイロットの視界を守る重要な素材として活躍したんですね。
その後、石油化学工業の発展とともに安価に製造できるようになり、現在では私たちの生活のあらゆる場面で使われるようになりました。

アクリル樹脂とプラスチックの違い
ここで重要なポイントを整理しましょう。アクリル樹脂とプラスチックの関係性についてです。
結論からいうと、アクリル樹脂はプラスチックの一種なんです。プラスチックという大きなグループの中に、アクリル樹脂が含まれているという構造になります。野菜というグループの中にキャベツやレタスがあるように、プラスチックというグループの中にアクリル樹脂があるイメージですね。
ただし、日常会話では「アクリル」と「プラスチック」を区別して使うことが多いんですよ。これは、アクリルが特別に優れた特性(高い透明性など)を持っているため、他の一般的なプラスチックとは別物として扱われることが多いからです。
実際、アクリルは「プラスチックの女王」という別名で呼ばれることもあるほど、特別な存在なんです。

アクリル樹脂の長所
アクリル樹脂の主な長所を整理してまとめましょう。製品選びの参考になる重要なポイントです。
アクリル樹脂の長所は以下になります。
透明度がガラスより高い
軽くて丈夫
加工性に優れる
耐候性が高い
割れても飛散しにくい
コスパが良い
リサイクル可能
まず透明度の高さは、アクリル樹脂の最大の魅力です。光線透過率93%という数値は、透明素材の中でもトップクラスなんですよ。この透明性と軽量性、そして強度を兼ね備えているため、ガラスの代替素材として広く使われています。
加工のしやすさも大きな長所です。切削、切断、穴あけ、研磨、接着など、様々な加工に対応できます。熱を加えれば曲げることもでき、複雑な形状の製品を作ることができるんです。この加工性の高さが、DIYから工業製品まで幅広い用途で使われる理由なんですね。
環境面での長所も見逃せません。アクリル樹脂はリサイクル可能な素材で、使用済みの製品を回収して再生利用することができます。熱硬化性樹脂と違い、熱可塑性樹脂であるため、再度溶かして成形し直すことができるんですよ。循環型社会の実現に貢献できる素材といえます。
コストパフォーマンスの良さも魅力です。これだけ優れた性能を持ちながら、比較的安価に製造できるため、様々な製品に採用されやすいんです。耐候性の高さから長期間使用でき、メンテナンスコストも抑えられます。
アクリル樹脂の短所
優れた特性を持つアクリル樹脂ですが、短所もあります。使用する際には注意が必要なポイントを確認しましょう。
アクリル樹脂の短所は以下になります。
熱に弱い
表面に傷がつきやすい
静電気を帯びやすい
燃えやすい
最も注意すべき短所は、熱に弱いことです。連続耐熱温度は60〜95℃程度で、この温度に達すると軟化(柔らかくなる)し始めます。120℃以上になると変形や溶解が起こる可能性があるんですよ。そのため、高温になる場所での使用には適していません。熱湯をかけたり、火のそばに置いたりすることは避ける必要があります。
表面の硬度が低く、傷がつきやすいのも短所の一つです。ガラスと比べると表面が柔らかいため、擦れや引っかきに弱いんです。傷がつくと透明度が損なわれてしまうため、取り扱いには注意が必要です。対策として、表面にシリコンコーティングを施す方法もありますが、完全に防ぐことは難しいのが現状です。
静電気を帯びやすいという特性もあります。これは多くのプラスチックに共通する性質なのですが、静電気によってホコリが付着しやすくなります。定期的な清掃が必要になるため、メンテナンスの手間がかかることがあります。
燃えやすい性質も注意点です。一般的なプラスチックも燃えやすい素材ですが、アクリル樹脂は特に可燃性が高いんですよ。火気のそばでの使用は避け、防火対策が必要な場所では他の素材を検討する必要があります。

身近な使用例
アクリル樹脂は、私たちの生活のあらゆる場面で使われています。具体的な使用例を見ていきましょう。
日用品での活用
最も印象的な使用例は、水族館の巨大水槽です。沖縄美ら海水族館の「黒潮の海」水槽には、高さ8.2メートル、幅22.5メートル、厚さ60センチという巨大なアクリルパネルが使われています。薄いアクリル板を何枚も貼り合わせて作られており、その透明度の高さから水中の魚たちをはっきりと観察できるんですよ。
フォトフレームもアクリル樹脂の代表的な使用例です。ガラス製のものと比べて軽く、落としても割れにくいため、安全性が高いんです。卓上に置くタイプから壁掛けタイプまで、様々なデザインのものがあります。
照明カバーにもよく使われています。高い透明度により光をしっかり透過させ、明るい照明を実現できます。また、デザイン性の高い形状に加工できるため、おしゃれな照明器具にも採用されているんです。
看板やディスプレイにも広く使用されています。耐候性が高いため、屋外の看板でも長期間美しい状態を保てます。店舗のディスプレイケースや展示会の展示台など、商品を魅力的に見せる用途でも活躍しています。

工業製品での活用
航空機の窓には、アクリル樹脂が使われています。高い透明度と耐衝撃性、軽量性が求められる航空機において、アクリル樹脂は理想的な素材なんですよ。気圧の変化にも耐えられる強度を持ちながら、機体の軽量化にも貢献しています。
自動車のランプ類にもアクリル樹脂が採用されています。テールランプ、ヘッドランプのカバー、方向指示器など、光を透過させる必要がある部品に使われているんです。耐候性が高いため、長期間使用しても黄ばみや劣化が起こりにくいという利点があります。
スマートフォンの画面保護や表示窓にも使用されています。軽量で割れにくく、高い透明度を持つアクリル樹脂は、携帯機器に最適な素材です。落下時の衝撃にも強く、画面を保護する役割を果たしています。
光学レンズとしても重要な役割を果たしています。メガネのレンズ、カメラのレンズ、各種計測機器のレンズなど、精密な光学性能が求められる分野でも活用されているんです。ガラスよりも軽く、加工がしやすいため、複雑な形状のレンズも製造できます。
建築・設備での活用
新型コロナウイルスの感染拡大以降、飛沫防止パーテーションの需要が急増しました。高い透明度により店内の様子がクリアに見渡せ、清潔な印象を与えられるため、飲食店やオフィス、学校など様々な場所で使われています。軽量で設置しやすく、移動も簡単なのも利点です。
浴槽にもアクリル樹脂が使われています。アクリル樹脂は撥水性(水を弾く性質)に優れているため、水垢や汚れが付きにくいんですよ。陶器製の浴槽と比べて、清掃が楽で衛生的に保ちやすいという特徴があります。また、真空成形により複雑な形状も作れるため、デザイン性の高い浴槽も製造できます。
洋式トイレの便器にもアクリル樹脂が採用されるようになりました。パナソニックの「アラウーノ」という製品では、アクリル樹脂の撥水性を活かし、汚れが付きにくく清掃しやすい便器を実現しています。従来の陶器製便器の欠点を克服した製品として注目されているんです。
建築材料としても使用されています。外壁材、窓材、屋根材など、透明性や耐候性が求められる部分に採用されています。ガラスと比べて軽量で割れにくいため、安全性の高い建築物を作ることができるんですよ。
似た素材との違い
アクリル樹脂と似た特性を持つ素材がいくつかあります。それぞれの違いを理解して、用途に応じて適切な素材を選びましょう。
ガラスとの比較
ガラスとアクリル樹脂は、どちらも透明で硬い素材として知られていますが、多くの違いがあります。透明度では、実はアクリル樹脂の方が上なんですよ。アクリルの光線透過率93%に対し、ガラスは92%です。わずかな差ですが、アクリルの方がより透明なんです。
硬度ではガラスの方が優れています。ガラスは表面が非常に硬く、傷がつきにくい素材です。一方、アクリル樹脂は表面が比較的柔らかく、擦れや引っかきで傷がつきやすいという違いがあります。展示品の保護など、傷のつきにくさが重要な場合はガラスの方が適しているでしょう。
重量では、アクリル樹脂が圧倒的に軽いです。ガラスの半分以下の重さしかないため、持ち運びや設置が楽なんです。大型の水槽や窓などでは、この軽量性が大きなメリットになります。
割れやすさでは、アクリル樹脂の方がはるかに安全です。ガラスの10〜16倍の耐衝撃性を持ち、万が一割れても飛散しにくいため、怪我のリスクが低いんですよ。子どもが使う製品や公共施設では、この安全性の高さが重視されます。
ポリカーボネート
ポリカーボネートは、アクリル樹脂と同じく透明なプラスチックです。両者は似ていますが、重要な違いがいくつかあります。
耐衝撃性では、ポリカーボネートの方が圧倒的に優れています。ガラスの約200倍以上という驚異的な強度を持ち、防弾材料としても使用できるほどなんですよ。スマートフォンのケースや、衝撃を受けやすい屋根材などに使われるのは、この高い耐衝撃性があるからです。
透明度では、アクリル樹脂の方が上です。ポリカーボネートも透明ですが、アクリルほどの透明度はありません。展示品や水槽など、透明性が最重要視される用途ではアクリル樹脂が選ばれることが多いんです。
ポリカーボネートについて詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
ポリプロピレン
ポリプロピレンは、アクリル樹脂とは特性が大きく異なるプラスチックです。最も大きな違いは、透明度にあります。ポリプロピレンは不透明または半透明で、アクリル樹脂のような高い透明性はありません。
耐熱性では、ポリプロピレンの方が優れています。アクリル樹脂が60〜95℃で軟化するのに対し、ポリプロピレンはもっと高温に耐えられるんですよ。そのため、電子レンジ対応の容器や、熱湯を入れる容器にはポリプロピレンが使われることが多いんです。
用途も大きく異なります。アクリル樹脂は透明性が求められる用途に使われますが、ポリプロピレンは食品容器、買い物袋、自動車部品、医療機器など、耐熱性や耐薬品性が求められる用途で使われているんです。
ポリプロピレンについて詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
まとめ
アクリル樹脂はプラスチックの一種であり、正式名称はポリメチルメタクリレート(PMMA)です。プラスチックという大きなグループの中に、アクリル樹脂が含まれる関係性なんですね。ただし、その優れた特性から「プラスチックの女王」とも呼ばれ、特別な存在として扱われています。
アクリル樹脂はリサイクル可能な熱可塑性樹脂であり、使用済み製品を回収して再生利用できます。循環型社会の実現に向けて、正しい知識を持って素材を選び、適切にリサイクルすることが私たちにできる貢献です。ぜひこの記事で得た知識を、日々の生活や製品選びに活かしてください。
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