プラスチック油化の課題と将来性!リサイクル技術を徹底解説

皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「プラスチックリサイクルの油化」です。私たちが毎日使っているペットボトルやレジ袋、食品トレイなどのプラスチック製品、使い終わった後にどうなっているのか気になったことはありませんか?

PP・PE(ポリプロピレン・ポリエチレン)のリサイクル,都市環境サービス

実は、これまで焼却処分されていた多くのプラスチックが、「油化」という技術によって再び新しいプラスチック製品に生まれ変わることができるんです。ただし、この技術にはいくつかの課題もあります。本記事では、プラスチック油化の仕組みから課題、そして将来性まで、詳しく解説していきます。

 

目次は以下の通りです。

 

① 油化とは何か
② 油化が注目される理由
③ 油化技術の主な方式
④ 油化が抱える課題
⑤ 国内企業の取り組み事例
⑥ 油化技術の将来性

 

油化技術は、環境にも経済にも優しい循環型社会を実現する重要な仕組みなんです。ぜひ最後までご一読ください。

油化とは何か

油化とは、使い終わったプラスチックを高温で分解して、再び使える油に変える技術のことです。ここでは油化の基本的な仕組みと、他のリサイクル方法との違いについて見ていきましょう。

熱分解による油化の仕組み

油化では、廃プラスチックを酸素のない状態で400〜800℃の高温に加熱します。この高温処理を「熱分解」と呼びます。

 

プラスチックは石油から作られているため、高温で分解すると再び油の状態に戻すことができるんです。この時、プラスチックの分子が小さく切断されて、ナフサと呼ばれる油が生成されます。ナフサは石油精製で得られる軽油の一種で、新しいプラスチック製品の原料となります。

 

生成されたナフサは、さらに「ナフサクラッキング」という工程で処理されます。これは高温でナフサを分解して、エチレンやプロピレンといったより小さな分子に変える作業です。そして、これらの分子からポリエチレンやポリプロピレンといった新しいプラスチックが作られます。つまり、プラスチックからプラスチックへの循環が実現できるんですよ。

他のリサイクル方法との違い

プラスチックのリサイクル方法は大きく3種類に分類されます。それぞれの特徴を理解することで、油化の位置づけがよく分かります。

 

プラスチックリサイクルの主な種類は以下になります。

 

マテリアルリサイクル
ケミカルリサイクル
サーマルリサイクル

 

マテリアルリサイクルは、プラスチックを溶かして別の製品に作り変える方法です。ペットボトルからフリースを作るような例が有名ですね。ただし、この方法は同じ種類のプラスチックだけを集める必要があり、汚れや複数の種類が混ざっていると処理が難しくなります。

 

油化はケミカルリサイクルの一種で、化学的な処理で原料レベルまで戻す方法です。マテリアルリサイクルと違って、汚れや異なる種類が混ざっていても処理できるという大きな利点があります。

 

一方、サーマルリサイクルは、プラスチックを燃やして熱エネルギーとして回収する方法です。国内の廃プラスチック処理の約6割がこの方法で処理されています[1]。しかし、燃やすと二酸化炭素が大量に発生するため、環境負荷が大きいという問題があります。油化はサーマルリサイクルに比べて二酸化炭素の排出量を削減できる点で優れています。

プラスチックリサイクル 油化

油化が注目される理由

近年、プラスチックの油化技術が世界中で注目を集めています。その背景には、従来のリサイクル方法では解決できなかった課題を克服できる可能性があるからです。ここでは油化が注目される3つの理由を詳しく見ていきましょう。

①混合プラの処理が可能

油化技術の最大の強みは、様々な種類のプラスチックが混ざった状態でも処理できることです。

 

家庭から出るプラスチックごみには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど複数の種類が混在しています。さらに、食品の残りや汚れが付着していることも多いですよね。こうした「混合プラスチック」は、マテリアルリサイクルでは処理が非常に難しいんです。

 

しかし、油化技術では熱分解によって分子レベルまで分解するため、元の種類や汚れをあまり気にせず処理できます。これにより、これまで焼却処分するしかなかった廃プラスチックの多くが、資源として再利用できるようになります。

 

実際に、国内では年間約820万トンの使用済みプラスチックのうち、再生品への利用は約2割にとどまっており、残りの大部分は焼却されているのが現状です[2]。油化技術の普及によって、この状況を改善できる可能性があります。

 

②新品同等の品質で再生

油化技術のもう一つの大きな特徴は、新品と同じ品質のプラスチック製品を作れることです。

 

マテリアルリサイクルでは、リサイクルを繰り返すごとに品質が下がってしまう「ダウンサイクル」という問題があります。例えば、ペットボトルをリサイクルしても、再びペットボトルにすることは難しく、繊維製品などに用途を変えなければなりません。

 

しかし、油化では原料レベルまで戻すため、バージン材(新品の原料)と同等の品質で再生できます。これを「水平リサイクル」または「ホリゾンタルリサイクル」と呼びます。プラスチックからプラスチックへ、同じ品質で何度でも循環させることができるんですよ。

 

この仕組みにより、新たに石油を掘削して原料を作る量を減らすことができます。石油は限りある資源ですから、油化技術の普及は資源の枯渇を防ぐことにもつながります。

プラスチックリサイクル 水平リサイクル 

③CO₂排出量の削減効果

環境面での大きなメリットとして、二酸化炭素排出量の削減効果があります。

 

プラスチックを焼却処分すると、大量の二酸化炭素が発生します。日本では年間約500万トンの廃プラスチックがサーマルリサイクルとして焼却されており、これが地球温暖化の一因となっています。

 

油化技術でも熱分解の際にエネルギーを使用するため、ある程度の二酸化炭素は発生します。しかし、製品のライフサイクル全体で比較すると、焼却処分よりも温室効果ガスの排出量を削減できることが分かっています。油化したプラスチックから新製品を作る方が、新たに石油を掘削して製品を作るよりも環境負荷が小さいんです。

 

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、プラスチック製造過程での二酸化炭素排出削減は重要な課題となっています。油化技術は、この課題解決に貢献できる有望な方法として期待されています。

油化技術の主な方式

油化技術と一口に言っても、実はいくつかの異なる方式があります。それぞれに特徴があり、処理できるプラスチックの種類や生成される油の品質が変わってきます。ここでは代表的な3つの方式について解説していきましょう。

熱分解方式の特徴

最も基本的な油化技術が、熱分解方式です。この方式では、廃プラスチックを窒素ガスなどで満たした無酸素状態の反応器に入れて加熱します。

 

処理温度によって生成される油の性質が大きく変わるのが特徴です。450〜500℃程度では、炭素数5〜30程度の液体状の油が主に得られます。一方、700〜750℃まで温度を上げると、炭素数1〜3程度の気体状のガスが多く生成されます。

 

ただし、熱分解方式には注意点もあります。塩化ビニル(PVC)やペットボトルの材料であるPET樹脂が混入していると、有害物質が発生する可能性があるんです。そのため、多くの熱分解方式では、事前にこれらの素材を除去する必要があります。また、熱分解の際に発火や爆発のリスクがあるため、安全対策も重要になります。

触媒接触分解方式

触媒接触分解方式は、特殊な触媒を使うことで、より効率的に油化を行う技術です。

 

環境エネルギー株式会社が開発したHiCOP方式では、人工ゼオライトという触媒を使用します。触媒とは、化学反応を促進する物質のことで、これを使うことで従来の熱分解方式よりも低い温度で処理できるんです。低温で処理できるということは、必要なエネルギーが少なくて済むということですから、運用コストの削減にもつながります。

 

この方式では、約50%のガソリン成分と約50%のディーゼル成分の混合油が生成されます。生成油の収率は投入した廃プラスチックの約80%と高く、効率的な油化が実現できています。また、塩化ビニルが若干混入していても、生成油中の残留塩素を70ppm以下という非常に低いレベルに抑えられるのも特徴です。

 

連続3日間運転後に触媒交換が必要ですが、プラントの清掃やメンテナンスの手間が減少し、安定した連続稼働が可能になります。

超臨界水技術

最も先進的な油化技術として注目されているのが、超臨界水を用いた方式です。

 

超臨界水とは、水を374℃以上、圧力22MPa以上の状態にしたもので、液体と気体の中間のような特殊な性質を持ちます。三菱ケミカルグループとENEOS株式会社が共同で開発しているこの技術では、超臨界水を使うことで熱を均一に加えることができます。

 

均一加熱のメリットは大きく2つあります。一つは、過分解によるガスの発生や局所的な加熱による炭化物の発生を防げること。もう一つは、加熱ムラが少ないため全体の加熱温度を下げられ、エネルギー効率が良くなることです。

 

さらに、この技術では異なる種類の廃プラスチックが混ざっていても原料として使用可能で、新品と同等の品質で製品を再生できます。連続運転により廃プラスチックを継続的に投入し続けることができ、年間2万トンという国内最大規模の処理能力を実現しています。

油化技術の種類

 

油化技術の将来性

油化技術は現在も発展途上にあり、様々な技術開発が進められています。社会的な要請も高まる中、この技術の将来性について考えてみましょう。ここでは3つの観点から油化技術の今後の展望を見ていきます。

技術開発の方向性

油化技術の実用化を進めるため、主に2つの方向で技術開発が進められています。

 

一つ目は、エネルギー効率の大幅な改善です。三井化学株式会社では、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実用化開発プログラムに採択された技術を開発しています。これは、熱分解条件の最適化と常温・常圧で行う化学処理を組み合わせたもので、従来の水素化精製などの方法と比べて約70%のエネルギーを節約できると期待されています。

 

二つ目は、不純物除去技術の進化です。異種混合・複合プラスチックを熱分解して得られる油には高濃度の不純物が含まれるため、これを効率的に除去する技術が求められています。新しい精製技術により、これまでサーマルリサイクルに回されていた廃プラスチックも油化ケミカルリサイクルの原料として活用できるようになることが期待されています。

規制強化と社会的要請

世界的にプラスチックのリサイクルに関する規制が強化されており、油化技術への期待が高まっています。

 

日本では2022年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。この法律は、プラスチックごみの削減とリサイクル促進を推進するもので、3R(リデュース・リユース・リサイクル)にRenewable(リニューアブル)を加えた基本原則が定められています。

 

欧州を中心に、プラスチックのリサイクル規制はさらに強化されつつあります。今後、再生プラスチックについても高い使用率が目標やルールとして設定されると予想されているんです。マテリアルリサイクルだけでは対応しきれない部分を、油化などのケミカルリサイクル技術で補う必要が出てくるでしょう。

 

また、海洋プラスチック問題や気候変動問題への対応として、プラスチックの資源循環を促進する社会的ニーズも高まっています。これらの要請に応えるため、油化技術の重要性はますます増していくと考えられます。

循環型社会への貢献

油化技術は、循環型社会の実現に向けて重要な役割を果たすことが期待されています。

 

エネルギー資源の乏しい日本にとって、廃プラスチックの再資源化を推進し、資源の自給率を上げることは非常に重要です。新たに石油を掘削する量を減らせれば、化石資源への依存度を下げることができます。

 

従来の焼却処分では、使用済みプラスチックは燃やされて終わりでした。しかし、油化技術によってプラスチックからプラスチックへと循環させることができれば、真の意味での循環型社会に近づくことができるんですよ。

 

これまでマテリアルリサイクルもされずに焼却・廃棄するしかなかった使用済みプラスチックを、新品同等のリサイクル材へと再生できる油化技術は、次世代に向けたソリューションとして大きな可能性を秘めています。技術開発が進み、コスト面での課題が解決されれば、食品業界や自動車業界など様々な業界が抱える廃プラスチックの課題解決に貢献できるでしょう。

まとめ

プラスチックの油化技術は、使い終わったプラスチックを再び新しいプラスチック製品に生まれ変わらせる革新的な技術です。混合プラスチックの処理が可能で、新品同等の品質で再生でき、CO₂排出量も削減できるという大きなメリットがあります。

 

しかし、高いエネルギー消費、設備投資コスト、原料の安定供給、不純物処理といった課題もまだ残されています。出光興産、ENEOS、三菱ケミカル、日揮グループなど国内企業が実用化に向けて取り組んでおり、技術開発も着実に進んでいます。

 

プラスチック資源循環促進法の施行や欧州での規制強化など、社会的な要請も高まる中、油化技術の重要性はますます増していくでしょう。私たち一人ひとりができることは、プラスチックごみを正しく分別し、リサイクルに協力することです。小さな行動の積み重ねが、循環型社会の実現につながります。ぜひ、今日からできることを始めてみませんか。

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都市環境サービス,プラスチックリサイクル,前田 隆之

参考文献

[1] 一般社団法人プラスチック循環利用協会. (2023). 2022年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況. プラスチックリサイクルの基礎知識
[2] 経済産業省. (2023). プラスチック資源循環の取組. プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律