皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「発泡スチロールのリサイクル」です。スーパーでの食品トレイや宅配便の緩衝材として日々使われている発泡スチロール、その後どうなっているか気になったことはありませんか?
実は発泡スチロールは、正しくリサイクルすることで再び私たちの生活に戻ってくるんです。ゴミとして処理するのはもったいない!本記事では、発泡スチロールのリサイクルフローについて、回収から再生品になるまでの流れを詳しく解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 発泡スチロールってどんなもの?
② 発泡スチロールリサイクルの全体像
③ 発泡スチロールのリサイクルフロー
④ 発泡スチロール再生品の新たな用途
発泡スチロールってどんなもの?
私たちの生活に欠かせない発泡スチロール。食品トレイから梱包材まで毎日のように使っていますが、その特徴や素材について詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
発泡スチロールの特徴と構造
発泡スチロールはポリスチレン(PS)というプラスチック素材を発泡させたものです。軽くて断熱性が高く、衝撃を吸収する特徴を持っています。また、成形しやすく安価で大量生産できるため、様々な用途に使われています。
発泡スチロールは主に以下のような形で使われています。
・食品用トレイ(肉類、魚類、惣菜など)
・梱包材・緩衝材(宅配便や精密機器の保護)
・断熱材(建築材料として)
・カップ麺の容器
・コンビニ弁当の容器
発泡スチロールの構造は、ポリスチレンの中に無数の小さな気泡が含まれた状態です。この気泡により、重量に対して体積が大きく、優れた断熱性と緩衝性を実現しています。実際、発泡スチロールの約98%は空気でできているんですよ。
このように無数の気泡でできているため、リサイクルの際には溶融して気泡を除去し、元のポリスチレン樹脂の状態に戻す必要があります。発泡スチロールをリサイクルする際に溶融処理が重要なのは、このためなんです。
年間約12万トンの発泡スチロール
日本では年間約12万トンもの発泡スチロールが消費されていると言われています。特に食品トレイとして使われるものが多く、スーパーやコンビニで販売される食品の多くに使用されています。
発泡スチロールは軽量で安価、かつ衛生的であるため、食品業界では欠かせない素材となっています。近年では環境への配慮から、薄肉化や植物由来原料の使用など、環境負荷を減らす取り組みも進んでいます。また、回収システムの整備により、リサイクル率も徐々に向上してきました。
ただ、便利な反面、使い捨てされることが多い発泡スチロールは環境問題の一因ともなっています。海洋プラスチック問題や埋立地の不足など、私たちの生活を脅かす問題にもつながっているんですよ。
リサイクルの必要性
発泡スチロールは自然界ではほとんど分解されず、そのまま捨てると数百年も残り続けてしまいます。また、体積が大きいため、埋立地のスペースを多く占有してしまうという問題もあります。焼却すれば処理はできますが、その過程で多くのCO2が発生し、地球温暖化の原因になってしまいます。
リサイクルすることで、新たな石油資源を使わずに済み、CO2の排出も抑えられます。また、ゴミとして処理する量も減らせるので、埋立地の寿命を延ばすことにもつながります。発泡スチロールは熱をかけると元のポリスチレン樹脂に戻るため、実はリサイクルしやすい素材なんです。
リサイクルした発泡スチロールからは、新しい発泡スチロール製品だけでなく、文房具やハンガー、フォトフレームなど様々な製品が作られます。資源を有効活用するためにも、発泡スチロールのリサイクルはとても重要なんです。
発泡スチロールリサイクルの全体像
発泡スチロールのリサイクルは、私たち消費者や事業者が分別して出すところから始まり、いくつもの工程を経て新しい製品に生まれ変わります。その全体の流れを見ていきましょう。
リサイクルの流れ
発泡スチロールのリサイクルは大きく分けて、
「収集」→「選別」→「溶融加工」→「再商品化」
という流れで進みます。
まずスーパーや飲食店、工場などから出された発泡スチロールは、プレスパッカー12m³などの専用車両によって集められ、リサイクル工場へと運ばれます。工場では弊社NPO法人ここのわのスタッフによる異物の除去と色別の選別が行われ、その後専用機械で溶融処理されます。
溶融した発泡スチロールは型に入れて一定の形に成形され、注文に応じて成形メーカーや再生ペレットメーカーに出荷されます。最終的に、フォトフレームや定規などの新しい製品として生まれ変わるのです。
全工程を通して品質管理が行われ、安全で高品質な再生品が作られるよう徹底されています。特に食品に触れる可能性のある製品については、より厳しい品質基準が設けられています。
日本のリサイクル率
日本の発泡スチロールリサイクル率は約25%程度とされており、ペットボトルと比較するとまだ改善の余地があります。しかし、近年は回収システムの整備により、徐々にリサイクル率が向上してきています。
特に食品トレイについては、スーパーマーケットでの店頭回収が進んでおり、消費者の協力により回収量が増加しています。また、事業系の発泡スチロールについても、コスト削減と環境配慮の観点から積極的にリサイクルに取り組む企業が増えています。
しかし、まだ75%程度は適切にリサイクルされておらず、燃やされたり埋め立てられたりしています。今後、より多くの発泡スチロールがリサイクルされるよう、回収システムの拡充と消費者・事業者の意識向上が重要になってきます。
リサイクルの種類
発泡スチロールのリサイクル方法には大きく分けて「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の2種類があります。
マテリアルリサイクルは、物理的な処理によって発泡スチロールを再生する方法です。発泡スチロールを洗浄して溶融し、新たな製品の原料にします。このプロセスが最も一般的で、環境への負荷も比較的少ないとされています。
一方、ケミカルリサイクルは化学的な処理を行います。発泡スチロールを化学反応によって分解し、元の原料であるスチレンモノマーに戻してから再び製品化する方法です。より純度の高い再生材料が得られますが、コストがかかるため、特殊な用途に限られています。
最近では「トレイtoトレイ」と呼ばれる、使用済み食品トレイから再び食品トレイを作る水平リサイクルも技術的に可能になってきており、今後の展開が期待されています。これは資源の循環という観点で理想的なリサイクル方法と言えるでしょう。
発泡スチロールのリサイクルフロー
発泡スチロールのリサイクルは、まずスーパーや飲食店、工場から出された発泡スチロールを回収するところから始まります。この初期段階がリサイクル全体の品質を左右する重要なポイントです。
①発泡スチロール回収
発泡スチロールの回収は、主に事業系回収が中心となります。スーパーマーケット、飲食店、食品加工工場、物流倉庫などから大量の発泡スチロールが発生します。
回収には、プレスパッカー12m³をはじめとする様々な専用車両が使用されます。発泡スチロールは軽量で体積が大きいため、効率的な回収には適切な車両選択が重要なんです。
一方、事業者による自主回収は、小売店やスーパーなどが自主的に回収ボックスを設置し、消費者が持ち込んだ食品トレイを回収する方法です。
事業所での回収では、主にプレスパッカーという車両を用いることが多いです。プレスパッカーは、発泡スチロールを回収する際に使用される特殊な車両です。通常、12立方メートルの容量を持ち、大量の発泡スチロールを一度に回収できます。
プレスパッカーは車両の後部に圧縮装置が付いており、回収した発泡スチロールをその場で圧縮できます。これにより輸送効率が大幅に向上し、一度の走行でより多くの発泡スチロールを回収することが可能になるんです。
②ストックヤードへの投入
回収された発泡スチロールは、リサイクル工場のストックヤードに運ばれます。ここではフォークリフトを使って、効率的に発泡スチロールを投入・保管します。軽量ながら体積の大きい発泡スチロールを安全かつ効率的に取り扱うため、フォークリフトの活用は欠かせません。
ストックヤードでは、発泡スチロールの種類別(食品トレイ、梱包材など)や色別に分けて保管されることもあります。これにより、後の選別作業を効率化し、リサイクル品質の向上にもつながります。フォークリフトを使用することで、作業員の負担軽減と作業効率の向上を同時に実現しているんです。
この段階では、まだ異物や汚れが付着した状態の発泡スチロールが大量に保管されているため、次工程の選別作業に向けた準備が整えられます。
③異物チェックと選別作業
ストックヤードに保管された発泡スチロールは、次に異物除去と色分けの工程に進みます。弊社では、NPO法人ここのわのスタッフが丁寧に作業を行っています。異物が混ざったままだとリサイクル製品の品質が低下してしまうため、とても重要な工程なんです。
以下の点をチェックする作業員がライン上で丁寧に確認していきます。
他のプラスチック製品が混ざっていないか
食品残渣や汚れが付着していないか
ラベルやテープが付いたままになっていないか
金属やガラス、その他異物が混入していないか
この選別作業は一部自動化されてきていますが、最終的な確認は人の目で行われることが多いです。NPO法人ここのわのスタッフによる経験と技術がリサイクル品質を支えています。また、色分け作業では、白色の発泡スチロールとカラー発泡スチロールを分けて選別します。白色のものは再生時の品質が高く、様々な用途に使用できるため、分けて処理されることが多いんです。
NPO法人ここのわのスタッフによる手作業は、障がい者雇用促進と品質向上の両方を実現する重要な取り組みです。丁寧な手作業により、高品質なリサイクル原料を作り出しています。
④溶融処理・型入れ
選別された発泡スチロールは、次に専用の溶融機械にかけられます。この機械では、発泡スチロールを加熱してドロドロの液状に溶かします。発泡スチロールは空気を抜くことで最大100分の1まで容積が減ります。つまり、発泡スチロール内の98%を占める気泡をすべて除去することで、元のポリスチレン樹脂の状態に戻るのです。
容積が劇的に減ることで、輸送効率と保管効率が大幅に向上します。これにより、マテリアルリサイクルだけでなく、燃料化処理も効率的に行えるようになります。軽量で体積の大きい発泡スチロールの最大の課題であった物流コストが大幅に削減されるんです。
溶融した発泡スチロールは、次に型に入れて一定の形に成形されます。
⑤出荷
品質チェックを通過した再生樹脂は、注文に応じて成形メーカーや再生ペレットメーカーに出荷されます。10トントラック1台分相当がまとまったタイミングで、次の工程を担当するメーカーへと出荷されていきます。
出荷先では、再生樹脂を原料として様々な製品が作られます。出荷時には、輸送効率を考慮してパレット積みやコンテナ詰めが行われます。再生樹脂の形状や出荷先に応じて、最適な梱包・輸送方法が選択されます。
発泡スチロール再生品の新たな用途
リサイクルされた発泡スチロールは、様々な製品として私たちの生活に戻ってきます。その用途と社会的意義を見ていきましょう。
再生発泡スチロールの用途
リサイクルされた発泡スチロールの再生材料は、驚くほど多くの製品に使われています。主な用途としては以下のようなものがあります。
文房具:定規、下敷き、ペンケース、フォトフレームなど
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日用品:ハンガー、収納ケース、掃除用具など
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建材:断熱材、軽量コンクリート骨材など
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工業部品:電気製品の部品、自動車部品など
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園芸用品:プランター、鉢受けなど
・
新たな発泡スチロール製品:食品トレイ、梱包材など
特に注目されているのが「トレイtoトレイ」と呼ばれる、使用済み食品トレイから再び食品用トレイを作る水平リサイクルです。技術の進歩により、リサイクル原料から作られたトレイでも、新品と変わらない品質のものが作れるようになっています。
日本のリサイクル技術は世界トップレベルで、再生発泡スチロール材料の純度も高く、さまざまな製品に使用されています。海外では道路の軽量盛土材や防波堤の軽量化材など、土木分野でも広く使われているんですよ。
環境への貢献
発泡スチロールのリサイクルは環境保全に大きく貢献しています。具体的には以下のような効果があります。
・CO2削減
リサイクル発泡スチロール1トンを生産すると、バージン(新品)材料を使う場合と比べて、約2.5トンのCO2排出削減になると言われています。
・石油資源の削減
発泡スチロールのリサイクルは、限りある石油資源の消費を抑えることにもつながります。発泡スチロールの原料であるポリスチレンは石油由来なので、リサイクルすることで新たな石油資源の使用を減らせるんです。
・埋立地の延命
発泡スチロールは軽量ですが体積が大きいため、埋立地で多くのスペースを占有してしまいます。リサイクルによって埋立地に捨てられるゴミの量を大幅に減らし、埋立地の延命にもつながります。
・海洋プラスチック問題の解決
適切に回収・リサイクルされた発泡スチロールは海に流れ出ることがなく、海洋生物への悪影響を防ぐことができます。特に発泡スチロールは細かく砕けやすいため、海洋汚染の原因となりやすい素材です。
このように、資源の有効活用と環境保全、両方の面から発泡スチロールのリサイクルは大きな意味を持っているんです。
私たちにできること
私たち一人ひとりができる発泡スチロールのリサイクル協力は以下のようなことです。
食品トレイは食べ残しを取り除き、軽く水洗いしてから分別する
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ラベルやテープは可能な限り剥がす
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色付きトレイと白色トレイを分けて出す
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店頭回収ボックスを積極的に利用する
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できるだけリサイクル素材を使った製品を選ぶ
特に食品トレイの場合、汚れが付いたままではリサイクルできないため、簡単な洗浄が重要です。しかし、洗剤を使う必要はなく、さっと水洗いするだけで十分です。リサイクルマークを見て正しく分別するよう心がけましょう。
また、マイ容器の活用により、使い捨て発泡スチロール容器の使用を減らすことも大切です。リサイクルと同時に、発生量自体を減らす「リデュース」の取り組みも重要です。事業者の方は、発泡スチロールの分別回収システムの導入や、リサイクル業者との連携により、より効率的なリサイクル体制を構築することができます。小さな行動の積み重ねが大きな環境保全につながるんですよ。
まとめ
発泡スチロールのリサイクルフローについてお話してきました。私たちが毎日何気なく使い、捨てている発泡スチロールが、実はさまざまな工程を経て新しい命を吹き込まれていることがおわかりいただけたでしょうか。回収から選別、溶融処理を経て、再び私たちの生活に戻ってくる、このリサイクルの輪は私たち一人ひとりの協力があってこそ成り立っています。
特に発泡スチロールは、軽量で体積が大きいという特性から、適切な処理が重要な素材です。しかし、正しくリサイクルすれば、ほぼ100%再利用できる貴重な資源でもあります。環境問題が深刻になる中、プラスチックの正しいリサイクルはますます重要になっています。
また、弊社のようにNPO法人ここのわとの連携により、障がい者雇用促進と環境保全を同時に実現する取り組みも、持続可能な社会の構築には欠かせません。リサイクル事業を通じて、環境・社会・経済の三つの側面から価値を創出することができるのです。次に食品トレイを手に取ったとき、軽く水洗いして、分別して出すという小さな行動から始めてみませんか?一人ひとりの行動が、地球の未来を変える第一歩になるかもしれません。
最後まで、読んでいただき光栄です。私たち都市環境サービスは、プラスチックリサイクルに特化した会社です。発泡スチロールの廃棄や燃料化に興味がある方、リサイクルの会社で働いてみたい方は、こちらのフォームから気軽にお問合せください。よろしくお願いします。