廃プラスチックのリサイクル方法を完全解説!3つの手法と企業の実例

皆さんこんにちは。今回のテーマは「廃プラスチックのリサイクル方法」です。毎日使っているペットボトルやレジ袋、食品トレイなど、プラスチック製品を捨てた後、それがどうなっているか気になったことはありませんか?

 

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実は日本では年間約800万トン以上のプラスチックが廃棄されているんです。そのうち約87%が何らかの形で再利用されているんですが、リサイクルの方法にはいくつかの種類があって、それぞれに特徴があるんですよ。正しく分別してリサイクルに出すことで、また新しい製品として生まれ変わることができます。

 

本記事では、廃プラスチックのリサイクル方法について、基本的な知識から最新の取り組みまで、わかりやすく解説していきます。

 

目次は以下の通りです。

 

① 廃プラスチックとは
② マテリアルリサイクル
③ ケミカルリサイクル
④ サーマルリサイクル
⑤ プラスチック資源循環促進法
⑥ 海洋プラスチック問題
⑦ 廃プラ輸出規制の影響
⑧ 企業のリサイクル事例
⑨ 家庭でできる分別のコツ
⑩ 企業のメリット
⑪ リサイクル率向上への課題

 

廃プラスチックのリサイクルは、私たち一人ひとりの行動が環境を守る大きな力になります。ぜひ最後までご一読ください。

廃プラスチックとは

私たちが日常生活で使い終わったプラスチック製品は、すべて「廃プラスチック」と呼ばれます。ここでは廃プラスチックの基本的な分類と、日本での排出状況について見ていきましょう。

一般廃プラと産業廃プラの違い

廃プラスチックは、どこから出されるかによって大きく2つに分けられます。家庭や飲食店、事務所などから出るプラスチックごみは「一般廃プラスチック」と呼ばれています。ペットボトルや食品トレイ、レジ袋などが代表的なものです。

 

一方、工場やプラスチックの製造過程で出るプラスチックのくずや破片は「産業廃プラスチック」に分類されます。産業廃プラスチックは種類が決まっていて汚れが少ないため、リサイクルしやすいという特徴があるんです。同じプラスチックのごみでも、出どころによって処理の方法が変わってくるんですね。

日本の廃プラ排出量

日本では2022年に年間約823万トンのプラスチックが廃棄されました。この数字はとても大きく感じるかもしれませんが、実際にどんな種類のプラスチックが多いのでしょうか[1]

 

廃棄されるプラスチックのうち、約半数の404万トンを占めているのが包装や容器類です。食品トレイやペットボトル、レジ袋などの容器包装が最も多く捨てられているんです。次に多いのが電気製品や機械類から出るプラスチックで、143万トンほどになります。

 

興味深いのは、製造段階で出る加工ロスも64万トンあるという点です。つまり、製品になる前の段階でも、かなりの量のプラスチックが廃棄されているんですね。これらの廃プラスチックのうち、約87%にあたる717万トンが何らかの形で有効利用されています[1]

廃プラスチック有効利用率

マテリアルリサイクル

廃プラスチックをもう一度プラスチック製品として生まれ変わらせる方法が、マテリアルリサイクルです。ここではその仕組みと、実際にどんな製品に生まれ変わるのかを見ていきましょう。

マテリアルリサイクルの仕組み

マテリアルリサイクルは、廃プラスチックを「材料」として再利用する方法です。「材料リサイクル」とも呼ばれています。回収されたプラスチックは、まず種類ごとに分けられ、ラベルやキャップなどの異物を取り除きます。

 

次に粉砕機で細かく砕いて、しっかりと洗浄します。きれいになったプラスチックは「フレーク」と呼ばれる薄片状になります。このフレークをさらに熱で溶かして固めると、「ペレット」という小さな粒状の原料ができあがります。このペレットが新しいプラスチック製品を作るための材料になるんです。

 

マテリアルリサイクルの良いところは、プラスチックをプラスチックのまま再利用できることです。ただし、汚れや異物が混ざっていると品質が落ちてしまうため、丁寧な分別と洗浄が必要になります。

マテリアルリサイクルで作られる製品

マテリアルリサイクルされたプラスチックは、私たちの身近なところで活躍しています。例えば、公園のベンチやフェンス、遊具などに使われています。コンテナや収納ボックス、土木工事で使われるシートなども、リサイクルプラスチックから作られているんです。

 

ペットボトルのリサイクルは特に進んでいて、回収されたペットボトルから繊維を作り、それを衣類やカバンに加工する技術も確立されています。また、最近では同じペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」という技術も実用化されています。

 

プラスチック製の文具やプランターなども、リサイクル材料から作られているものが増えています。買い物の際に商品をよく見ると、リサイクルマークがついているものを見つけられるかもしれませんね。

マテリアルリサイクルの課題

環境に優しいマテリアルリサイクルですが、実は日本での実施率は全体の約22%にとどまっています[1]。なぜこんなに低いのでしょうか。最大の理由は、分別と洗浄にかかるコストが高いことです。

 

特に家庭から出る一般廃プラスチックは、さまざまな種類のプラスチックが混ざっていたり、食品の汚れがついていたりします。これを種類ごとに分けて洗浄する作業は、ほとんどが手作業で行われるため、時間も人手もかかるんです。

 

一方、工場から出る産業廃プラスチックは種類が決まっていて汚れも少ないため、マテリアルリサイクル率が約30%と高くなっています[1]。家庭でのより丁寧な分別と洗浄が、マテリアルリサイクルを増やすカギになりそうですね。

 

ケミカルリサイクル

プラスチックを化学的に分解して、別の資源として生まれ変わらせる方法がケミカルリサイクルです。マテリアルリサイクルが難しいプラスチックでも処理できる技術として注目されています。

ケミカルリサイクルの種類

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に処理して分解し、化学原料として再利用する方法です。主に4つの技術があります。
ケミカルリサイクルの主な技術は以下になります。

 

高炉原料化
コークス炉化学原料化
ガス化
油化

 

高炉原料化は、製鉄所で鉄を作る際にプラスチックを還元剤として使う方法です。プラスチックは炭素と水素でできているため、コークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)の代わりに使えるんです。コークス炉化学原料化では、廃プラスチックから炭化水素油やコークス炉ガスを作り出します。

 

ガス化は廃プラスチックを分解してガスにする方法で、そのガスを化学工業の原料や燃料として使います。油化は廃プラスチックを石油に近い油に戻す技術で、最も注目されている方法の一つです。

廃プラ油化の注目技術

廃プラ油化は、プラスチックの原料である石油に戻す技術として、特に期待が集まっています。プラスチックを高温で熱分解すると、「熱分解油」という石油に近い油ができます。この油を製油所で処理すれば、また新しいプラスチックの原料として使えるんです。

 

この技術の素晴らしいところは、「水平リサイクル」が実現できることです。水平リサイクルとは、同じ品質の製品に何度も生まれ変わることを指します。従来は品質が落ちて別の製品になる「ダウンサイクル」が主流でしたが、油化技術なら元の品質を保てるんですね。

 

さらに、廃プラスチックを単純に燃やすよりもCO2の排出量を減らせるというメリットもあります。石油の採掘量も減らせるため、資源の少ない日本にとって重要な技術として開発が進められています。

ケミカルリサイクルのメリット

ケミカルリサイクルの大きなメリットは、マテリアルリサイクルが難しいプラスチックでも処理できることです。複数の種類のプラスチックが混ざっていても、汚れがついていても、化学的に分解してしまえば原料として使えます。

 

また、既存の製油所や化学プラントの設備を活用できるため、新しく大きな施設を作る必要が少ないという利点もあります。初期投資を抑えながら、効率的にリサイクルを進められるんです。

 

ただし現在、日本での実施率は約3%と低い状況です[1]。技術開発が進んでコストが下がれば、今後さらに普及していくことが期待されています。特に油化技術は、日本のリサイクル率を大きく向上させる可能性を秘めているんです。

サーマルリサイクル

廃プラスチックを燃やした時に出る熱をエネルギーとして利用するのが、サーマルリサイクルです。日本で最も多く行われているリサイクル方法について詳しく見ていきましょう。

サーマルリサイクルとは

サーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃やした際に発生する熱エネルギーを回収して利用する方法です。プラスチックは石油からできているため、燃やすと紙類の約3倍もの熱を出すんです。この高い発熱量を活用するのがサーマルリサイクルの特徴です。

 

具体的には、ごみ焼却施設で廃プラスチックを燃やし、その熱で水を沸騰させて蒸気を作ります。この蒸気でタービンを回して発電する「ごみ発電」が代表的な例です。発電した電気は施設内で使ったり、電力会社に売ったりできます。

 

また、焼却時の熱を温水プールや温浴施設の加温に使ったり、地域の暖房に活用したりしている自治体もあります。さらに、廃プラスチックを固めて作る「RPF(固形燃料)」は、工場のボイラー燃料として利用されています。

日本で主流な理由

日本では廃プラスチックの約60%がサーマルリサイクルで処理されています[1]。これは他の先進国と比べて非常に高い割合です。なぜ日本でサーマルリサイクルが主流になったのでしょうか。

 

最大の理由は、分別の手間がかからないことです。マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルでは、プラスチックの種類を細かく分けたり、汚れを落としたりする必要があります。しかしサーマルリサイクルなら、種類が混ざっていても汚れがついていても燃やせるんです。

 

また、日本は国土が狭く埋立地が限られているため、ごみを減らす必要がありました。焼却すればごみの量を大幅に減らせますし、その熱を有効活用できます。こうした事情から、日本では早くからごみ焼却とサーマルリサイクルが発達してきたんですね。

国際的な評価の課題

サーマルリサイクルは日本では広く行われていますが、実は国際的には「リサイクル」として認められない場合があります。欧州などでは、物質として再利用する「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」だけを本当のリサイクルとみなす考え方が主流なんです。

 

日本のリサイクル率は87%と高い数字ですが、これはサーマルリサイクルを含めた数字です。もしサーマルリサイクルを除くと、リサイクル率は約25%まで下がってしまいます[1]。欧州の多くの国では50%を超えているため、日本はまだまだ改善の余地があるといえます。

 

環境への配慮という観点では、プラスチックを物質として循環させることが理想的です。そのため日本でも、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの比率を高めていくことが今後の課題となっています。

プラスチック資源循環促進法

プラスチックごみ問題の解決に向けて、2022年4月から新しい法律が施行されました。この法律によって何が変わったのか、詳しく見ていきましょう。

2022年4月施行の新法

2022年4月1日から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」、通称「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。この法律は、プラスチック製品が作られてから捨てられるまでの全ての段階で、資源の循環を促進することを目指しています。

 

この法律の基本となるのが「3R+Renewable」という考え方です。3Rとは、Reduce(ごみを減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(資源として再利用する)のことです。これに「Renewable(再生可能な資源に替える)」を加えた4つの視点で、プラスチック問題に取り組んでいきます。

 

この法律では、製品を作る事業者、商品を提供する事業者、自治体、そして私たち消費者が、それぞれの立場で協力してプラスチックの循環を進めることが求められています。みんなで取り組むことで、より大きな効果が期待できるんですね。

特定プラスチック製品の規制

この法律では、コンビニや飲食店などで無料で配られる使い捨てプラスチック製品が規制の対象になりました。具体的には12種類の製品が「特定プラスチック使用製品」として指定されています。

 

規制対象となる製品は以下になります。

 

フォーク
スプーン
ナイフ
マドラー
ストロー
ヘアブラシ
くし
かみそり
シャワーキャップ
歯ブラシ
衣類用ハンガー
クリーニング袋

 

これらの製品を年間5トン以上提供している事業者は「多量提供事業者」とされ、使用量を減らす取り組みが義務付けられました。

 

例えば、有料化したり、お客さんが本当に必要な時だけ渡したり、繰り返し使える製品に切り替えたりする必要があります。取り組みが不十分な場合は、勧告や命令を受けることもあるんです。

企業に求められる対応

プラスチック製品を製造・販売する企業には、いくつかの対応が求められています。まず、製品の設計段階から環境に配慮することです。リサイクルしやすい設計にしたり、使うプラスチックの量を減らしたり、バイオプラスチックを使ったりする工夫が必要です。

 

また、自分の会社が作った製品を自主的に回収してリサイクルする取り組みも推奨されています。例えば、店舗に回収ボックスを設置して、使い終わった製品を回収するといった方法です。

 

特に廃プラスチックを大量に排出する事業者は、排出量を減らす計画を立てて実行することが求められています。この法律に違反すると、最大50万円の罰金が科される可能性もあります。企業にとっては、環境への配慮とコンプライアンスの両面から、プラスチック対策が重要な課題になっているんです。

海洋プラスチック問題

廃プラスチックが海に流れ出ることで起きる海洋汚染は、世界中で深刻な問題になっています。私たちの暮らしと海がどのようにつながっているのか、見ていきましょう。

海に流出する廃プラの現状

世界中で毎年、数百万トンものプラスチックごみが海に流れ込んでいます。2015年までに生産されたプラスチックは[2]世界で83億トンを超え、そのうち63億トンが既に廃棄されています。しかも、リサイクルされているのはわずか9%程度で、残りは焼却されたり、埋め立てられたり、自然環境に蓄積されたりしているんです。

 

このままでは、2050年には海の中のプラスチックごみの量が魚の量を超えてしまうという予測もあります。想像してみてください。海で泳ぐ魚よりも、漂うプラスチックごみの方が多い海を。これは決して大げさな話ではなく、このままの状態が続けば本当に起こりうる未来なんです。

 

特に問題なのが「マイクロプラスチック」です。これは5mm以下の小さなプラスチックの粒子で、波や紫外線によって大きなプラスチックが砕けてできます。プラスチックは自然に分解されないため、何百年も海に残り続けるんです。

日本の海洋流出の実態

海洋プラスチック問題は、海岸地域だけの問題ではありません。内陸部で捨てられたプラスチックも、雨や川を通って最終的には海に流れ着くんです。ポイ捨てされたごみや、ごみ箱からあふれて風に飛ばされたごみ、不適切に処理されたごみなどが、「管理できていないプラスチックごみ」として海に流出しています。

 

日本は廃棄物の回収システムがしっかりしているため、生産量の割には海への流出量は少ない方です。しかし、それでもゼロではありません。海岸清掃をすると、ペットボトルやレジ袋、食品トレイなどの日用品が大量に見つかります。

 

特にアジア地域では、世界の管理できていないごみの6割以上が発生しているといわれています。海にはつながっているため、他の国から流れ着くごみもあり、国際的な協力が必要な問題なんですね。

生態系への深刻な影響

海に流出したプラスチックは、海洋生物に深刻な被害を与えています。ウミガメがレジ袋をクラゲと間違えて食べてしまったり、鳥がプラスチック片をエサと間違えて雛に与えてしまったりするケースが報告されています。プラスチックを飲み込んだ生物は、消化できずに命を落とすこともあります。

 

また、漁網やロープなどのプラスチックごみに絡まって、身動きが取れなくなる海洋生物も多くいます。マイクロプラスチックは魚やプランクトンが食べてしまい、食物連鎖を通じて最終的には私たち人間の体にも入ってくる可能性が指摘されています。

 

経済的な影響も無視できません。海岸に漂着するごみで景観が悪化し、観光客が減ってしまう地域があります。漁業では、網にプラスチックごみが絡まって作業の邪魔になったり、魚についたごみを取り除く手間がかかったりします。経済協力開発機構(OECD)によると、海洋プラスチック問題による損失は年間約130億ドル(約1兆4300億円)に達するといわれています[2]

廃プラ輸出規制の影響

これまで日本は廃プラスチックの一部を海外に輸出していましたが、近年、各国で規制が強化されています。この変化が日本にどのような影響を与えているのか見ていきましょう。

中国の輸入禁止措置

日本は長年、廃プラスチックの処理を海外に頼ってきました。特に中国は、日本から輸出される廃プラスチックの主な受け入れ先でした。しかし2017年末、中国政府は環境汚染対策として、廃プラスチックの輸入を突然禁止したんです。

 

中国の輸入禁止後、日本は廃プラスチックの輸出先を台湾や東南アジアの国々に切り替えました。しかし、これらの国々も次々と輸入規制を強化し始めました。タイ、マレーシア、ベトナムなどが規制を導入し、受け入れ量を大幅に減らしたのです。

 

2024年の統計では、日本が輸出した廃プラスチックは約68万トンでした。輸出先の国々がリサイクル設備を十分に持っていない場合、廃プラスチックが適切に処理されず、現地で環境問題を引き起こすこともあります。このため、輸出に頼らず国内で処理する体制を整えることが急務となっているんです。

国内処理体制の課題

輸出規制の強化により、日本国内で処理しなければならない廃プラスチックの量が急増しました。しかし、国内の処理施設のキャパシティ(処理能力)には限りがあります。そのため、一部の処理業者では廃プラスチックの保管量が増え、保管基準を超えてしまうケースも出てきました。

 

環境省の調査によると、2019年時点では不法投棄は確認されていませんでしたが、保管基準違反などの問題が一部地域で発生しています。このままでは、適切に処理できない廃プラスチックが増え、不適正な処理が行われるリスクがあります。

 

こうした状況を受けて、政府は既存の処理施設をフル活用する体制を整えるとともに、新しいリサイクル施設の建設を支援しています。また、関係団体と連携して、問題が起きた時にすぐ対応できる体制も作っています。国内での資源循環体制を強化することが、今後ますます重要になってくるんですね。

バーゼル法の強化

国際的には「バーゼル条約」という枠組みがあり、有害廃棄物の国境を越えた移動を規制しています。この条約に対応する日本の法律が「バーゼル法」です。正式名称は「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」といいます。

 

近年、この規制が強化され、汚れた廃プラスチックや複数の種類が混ざった廃プラスチックの輸出が制限されるようになりました。輸出する際には、輸出先の国での処理方法を確認し、適切にリサイクルされることを確認する必要があります。

 

これらの規制強化は、一見すると日本にとって厳しい条件に思えるかもしれません。しかし、見方を変えれば、国内でリサイクル産業を発展させるチャンスでもあります。技術開発や新しいビジネスモデルの構築を通じて、持続可能な資源循環社会を実現するきっかけになると期待されているんです。

企業のリサイクル事例

日本の企業や自治体では、廃プラスチックのリサイクルに向けた様々な取り組みが始まっています。ここでは先進的な事例を紹介していきます。

花王とライオンの共同回収

洗剤やシャンプーの大手メーカーである花王株式会社とライオン株式会社は、2021年から詰め替えパックの共同回収に取り組んでいます。通常、競合する企業同士が協力することは珍しいのですが、環境問題の解決のために手を組んだんです。

 

両社は全国のスーパーやドラッグストアに、詰め替えパック専用の回収ボックスを設置しました。消費者は使い終わった洗剤やシャンプーの詰め替えパックを、買い物のついでに店頭のボックスに入れることができます。

 

回収された詰め替えパックは、リサイクル工場で選別・洗浄され、再びプラスチック原料として生まれ変わります。組み立てが簡単なブロック玩具や、新しい詰め替えパックの材料として使われています。現在も、より効率的な回収システムの開発や、リサイクル技術の向上に向けた研究が続けられています。

神戸市の先進的な取り組み

神戸市は2021年10月から「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」というプロジェクトを開始しました。これは神戸市、小売業、日用品メーカー、リサイクル業者が一体となって取り組む画期的な事業です。

 

市内75か所の店舗に設置された回収ボックスには、洗剤やシャンプーなどのプラスチック容器を入れることができます。集められた容器は丁寧に分別され、リサイクル処理を経て、再び詰め替えパックとして消費者のもとに戻ってきます。

 

この取り組みの素晴らしいところは、自治体が中心となって民間企業と連携している点です。回収からリサイクル、そして再び製品化して販売するまでの一連の流れを、地域ぐるみで実現しています。他の自治体のモデルケースとしても注目されているんです。

三井物産の技術開発

総合商社の三井物産株式会社は、プラスチックリサイクルの技術開発に力を入れています。特に注目されているのが、アメリカのPureCycle Technologies社との提携です。この会社は、廃プラスチックから高品質なリサイクルポリプロピレン(PP)樹脂を生産する技術を持っています。

 

従来のマテリアルリサイクルでは、再生品の品質が元の製品より落ちてしまうことが課題でした。しかしPureCycle社の技術を使えば、新品と同等の品質のプラスチックを作ることができるんです。三井物産は、この技術を日本に導入するための取り組みを進めています。

 

また、三井物産は「ライスレジン」という独自のバイオプラスチックソリューションも展開しています。これは食用に適さないお米から作られるバイオマスプラスチックで、石油由来のプラスチックを代替できる環境に優しい素材です。このような多角的な取り組みが、循環型社会の実現に貢献しています。

本田技研の水平リサイクル

自動車メーカーの本田技研工業株式会社は、三菱ケミカル株式会社、北海道自動車処理協同組合と共同で、アクリル樹脂の水平リサイクル実証実験に取り組んでいます。自動車のテールランプなどに使われるアクリル樹脂を回収し、再び同じ品質のアクリル樹脂として再生する技術です。

 

これまで廃車から取り出されたプラスチック部品は、品質が落ちるため別の用途に使われることが多く、自動車部品として再利用することは困難でした。しかし、この実証実験では化学的な処理技術を活用することで、新品と同等の品質を実現しました。

 

自動車産業は大量のプラスチックを使用する業界です。この水平リサイクルが実用化されれば、自動車のプラスチック部品を何度も循環させることができ、資源の節約とCO2削減に大きく貢献します。将来的には、自動車全体の循環型モデル構築を目指しているんです。

家庭でできる分別のコツ

リサイクルの質を高めるには、私たち一人ひとりの正しい分別が欠かせません。ここでは家庭で実践できる分別のポイントを紹介します。

正しい分別方法

プラスチックの分別ルールは、実は自治体によって違います。まず、お住まいの市区町村のホームページやごみ出しカレンダーで、どのようにプラスチックを分別すればよいか確認しましょう。ペットボトル以外のプラスチックを「容器包装プラスチック」として分別する地域もあれば、「不燃ごみ」として出す地域もあります。

 

プラスチック製品には「プラマーク」という識別表示がついています。これは容器や包装に使われているプラスチックに表示される三角形のマークです。このマークがついているものは、多くの自治体で資源ごみとして回収されます。

 

ただし、プラスチック製品でも、歯ブラシやハンガーなどの製品プラスチックは、容器包装プラスチックとは別の扱いになることがあります。また、汚れが落ちないものや、プラスチック以外の素材と一体化しているものは、分別方法が異なる場合があるので注意が必要です。

リサイクルの質を高める工夫

プラスチック容器をリサイクルに出す前に、ちょっとした手間をかけることで、リサイクルの品質が大きく向上します。最も重要なのは、容器を水で軽くすすいで汚れを落とすことです。食品の残りや油汚れがついたままだと、リサイクル処理の際に品質が落ちてしまいます。

 

弁当容器や食品トレイは、使った後すぐに水洗いすると汚れが落ちやすくなります。油汚れがひどい場合は、キッチンペーパーで拭き取ってから洗うと効果的です。また、ペットボトルのラベルとキャップは、本体とは別の素材でできていることが多いので、分けて出すことが推奨されています。

 

容器包装プラスチックに、金属やガラス、紙などの異物が混ざっていると、リサイクル処理ができなくなってしまいます。例えば、プラスチック容器についているアルミ蓋は、できるだけきれいにはがして別にしましょう。丁寧な分別が、質の高いリサイクルにつながるんです。

家庭の取り組みの重要性

実は家庭から出る一般系廃プラスチックのマテリアルリサイクル率は、産業系に比べて低いのが現状です。その理由は、家庭から出るプラスチックは種類が混ざっていたり、汚れがついていたりすることが多いためです。

 

しかし、これは裏を返せば、私たち一人ひとりが丁寧に分別して洗浄すれば、リサイクル率を大きく向上させられるということです。「たった一人の行動では変わらない」と思うかもしれませんが、一つの自治体で何万世帯もが正しく分別すれば、その効果は計り知れません。

 

また、子どもと一緒にごみの分別をすることは、環境教育の良い機会にもなります。なぜ分別が必要なのか、リサイクルされたプラスチックがどう生まれ変わるのかを話しながら取り組むことで、次世代への環境意識の継承にもつながっていきます。

企業のメリット

廃プラスチックのリサイクルに取り組むことは、企業にとって様々な利点があります。環境保護だけでなく、ビジネス面でのメリットも大きいんです。

ESG評価の向上

近年、投資家が企業を評価する際に重視しているのが「ESG」です。ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの要素を指します。環境問題への積極的な取り組みは、このESG評価を高める重要な要素なんです。

 

プラスチックのリサイクルに取り組む企業は、環境保護に貢献する企業として投資家から注目されます。ESG投資を重視する投資家が増えているため、ESG評価が高い企業には投資が集まりやすくなります。これは「サステナブルファイナンス」と呼ばれ、企業の資金調達にも有利に働きます。

 

また、ESG評価の向上は株価にもプラスの影響を与える可能性があります。長期的な視点で見れば、環境に配慮した経営は企業の持続的な成長を支える基盤となり、結果として企業価値の向上につながっていくんです。

コスト削減効果

廃プラスチックをリサイクルすることで、企業は実際にコストを削減できます。まず、廃棄物として処理する量が減るため、ごみ処理にかかる費用を減らすことができます。産業廃棄物の処理には相応の費用がかかるため、この削減効果は大きいんです。

 

さらに、きれいな状態の廃プラスチックは、リサイクル業者に「再生原料」として売却できる場合があります。つまり、ごみとして処理費用を払うのではなく、資源として収入を得られる可能性があるということです。

 

また、自社製品の原料にリサイクルプラスチックを使用すれば、新しいプラスチック原料を購入するコストを抑えることができます。廃棄物処理の手間が減ることで、業務の効率化も実現できます。環境保護とコスト削減の両立は、企業経営の理想的な形といえるでしょう。

ブランド価値の強化

レジ袋の有料化をきっかけに、環境問題への消費者の関心は年々高まっています。環境に配慮した製品やサービスを提供する企業は、消費者から高く評価され、信頼を獲得しやすくなります。

 

特に若い世代は、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を重視する傾向が強くなっています。プラスチックリサイクルへの取り組みを積極的に発信することで、「環境に優しい企業」というブランドイメージを確立できます。

 

このイメージは、単に製品の販売促進だけでなく、優秀な人材の採用活動にも好影響を与えます。就職活動をする学生の多くが、企業の環境への取り組みを重視しているというデータもあります。ブランド価値の向上は、長期的な企業の成長を支える重要な資産となるんです。

リサイクル率向上への課題

日本のプラスチックリサイクルをさらに進めるためには、いくつかの課題を解決する必要があります。ここでは主な課題と解決の方向性を見ていきましょう。

分別の徹底が必要

日本の廃プラスチックリサイクル率は高いものの、その内訳を見ると改善の余地があります。特に一般家庭から出る廃プラスチックは、様々な種類が混ざっていたり、食品などの汚れがついていたりするため、リサイクルの品質を保つのが難しいんです。

 

マテリアルリサイクルでは、プラスチックの種類を細かく分別し、異物を完全に取り除く必要があります。この作業の多くは手作業で行われるため、人件費がかかります。自動化技術の開発も進められていますが、まだ実用化には至っていない部分が多いのが現状です。

 

この課題を解決するには、消費者による分別の精度を高めることと、AI(人工知能)などを活用した自動分別技術の開発を進めることの両方が必要です。技術開発には時間と投資が必要ですが、長期的には必ず実を結ぶと期待されています。

サーマル依存からの脱却

現在の日本では、廃プラスチックの約60%がサーマルリサイクルで処理されています。エネルギーとして回収することも重要ですが、物質として再利用するマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを増やすことが、国際的な基準では求められています。

 

欧州の多くの国では、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを合わせて50%以上を達成しています。一方、日本ではこの2つを合わせても約25%にとどまっています[1]。今後は、この比率を少なくとも50%まで引き上げることが目標となります。

 

そのためには、新しいリサイクル技術への投資が不可欠です。特に廃プラ油化などのケミカルリサイクル技術は、コストが高いことが普及の障壁となっています。政府の支援や企業の積極的な投資によって、技術開発とコスト削減を進める必要があるんです。

循環型社会の実現

プラスチックリサイクルを本当の意味で成功させるには、企業や自治体が単独で取り組むだけでは限界があります。業種や業態を超えた連携が重要になってきます。例えば、複数の企業が共同で廃プラスチックを回収し、まとめて処理する仕組みを作ることが考えられます。

 

「廃プラスチック回収ターミナル」のような、企業が自由にアクセスできる共有の回収・処理施設があれば、各社が抱える回収量の不安定さという問題を解決できます。集約した廃プラスチックを処理した後、参加企業に配分する仕組みです。

 

こうした取り組みには、自治体の協力も欠かせません。官民が一体となって、地域ぐるみでプラスチックの循環システムを構築していく。そんな社会全体での取り組みが、持続可能な循環型社会の実現につながっていくんです。

 

まとめ

ここまで廃プラスチックのリサイクル方法について詳しく見てきました。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルという3つの主要な方法があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあることがわかりました。日本では現在、サーマルリサイクルが約60%を占めていますが、今後は物質として再利用するリサイクルを増やしていくことが課題です。

 

2022年に施行されたプラスチック資源循環促進法により、企業や自治体、そして私たち消費者一人ひとりに、プラスチックとの向き合い方を見直すことが求められています。海洋プラスチック問題や輸出規制の影響など、解決すべき課題は多くありますが、企業の先進的な取り組みや新技術の開発により、希望の光も見えてきました。

 

あなたにできることは、まず家庭でのプラスチックの分別を丁寧に行うことです。容器を軽くすすいで、ラベルを分けて、正しく分別する。この小さな行動の積み重ねが、リサイクルの質を高め、循環型社会の実現につながります。今日から、あなたも廃プラスチックリサイクルの一員として、行動を始めてみませんか。私たち一人ひとりの選択が、美しい地球を次世代に引き継ぐ力になるのです。

お知らせ

最後まで、読んでいただき光栄です。私たち都市環境サービスは、プラスチックリサイクルに特化した会社です。フラフ燃料の製造や代替燃料に興味がある方、リサイクルの会社で働いてみたい方は、こちらのフォームから気軽にお問合せください。よろしくお願いします。

都市環境サービス,プラスチックリサイクル,前田 隆之

出典: