皆さんこんにちは。都市環境サービスの前田です。今回のテーマは「最終処分場の仕組み」です。私たちが毎日出しているゴミ、その最後の行き先について考えたことはありますか?

実は、リサイクルできないゴミは「最終処分場」という施設で安全に埋め立て処分されているんです。でも、この処分場の容量には限界があり、このままでは約20年後には埋める場所がなくなるかもしれません。本記事では、最終処分場の仕組みや種類、環境を守る技術について詳しく解説していきます。
目次は以下の通りです。
①最終処分場とは
②3種類の処分場
③環境を守る設備
④処分場の管理方法
⑤残余年数の現状
⑥処分場が抱える課題
⑦埋立終了後の処分場
⑧私たちにできること
最終処分場は私たちの生活を支える重要な施設なんです。ぜひ最後までご一読ください。
最終処分場とは
最終処分場は、私たちの生活から出る廃棄物を最終的に処理する重要な施設です。その役割や種類について詳しく見ていきましょう。
最終処分場の役割
最終処分場とは、リサイクルや再利用が難しい廃棄物を安全に埋め立てる施設のことです。私たちの生活から出るゴミは、まず焼却や破砕などの処理が行われます。しかし、それでも残ってしまう焼却灰や処理できないゴミは、どこかに保管しなければなりません。そこで必要になるのが最終処分場なんです。
最終処分場の役割は、ただゴミを埋めるだけではありません。廃棄物を生物的、物理的、化学的に安定した状態にして、周りの環境に悪影響を与えないようにすることが目的です。つまり、地下水や土壌を汚染しないように、しっかりと管理しながら廃棄物を保管し続ける施設なんですね。
廃棄物の種類
廃棄物には大きく分けて「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類があります。一般廃棄物は家庭から出るゴミや、事業所から出る紙くずなどです。一方、産業廃棄物は工場や建設現場などの事業活動で出る廃棄物を指します。それぞれの廃棄物に応じた最終処分場が用意されており、法律で厳しく管理されています。
処分場の現状
現在、日本全国には約1,775カ所の最終処分場があります[1]。これらの施設が私たちの生活を支えているわけですが、その容量には限界があるんです。だからこそ、最終処分場の仕組みを理解し、ゴミを減らす努力が必要になってきます。

3種類の処分場
産業廃棄物の最終処分場は、埋め立てる廃棄物の危険性に応じて3つの種類に分類されています。それぞれの処分場で構造や管理方法が大きく異なるんです。
安定型処分場
安定型処分場は、最もシンプルな構造の処分場です。ここでは「安定5品目」と呼ばれる廃棄物だけを埋め立てることができます。
安定5品目に該当する廃棄物は以下になります。
廃プラスチック類
ゴムくず
金属くず
ガラスくず
陶磁器くず
がれき類
これらの廃棄物は、雨に濡れても腐ったり、有害な物質が溶け出したりしない性質を持っています。そのため、穴を掘って廃棄物を入れ、上から土で覆うというシンプルな方法で処分できるんです。ただし、安定型処分場でも安全管理は重要です。
入される廃棄物が本当に安定5品目だけなのかを確認するため、「展開検査」という検査が行われます。これは、運ばれてきた廃棄物を広げて、他の種類のゴミが混ざっていないかチェックする作業です。
また、地下に浸透した水を採取して水質検査を行う設備も設置されています。
管理型処分場
管理型処分場は、安定5品目以外の産業廃棄物や一般廃棄物を埋め立てる施設です。日本で最も一般的な処分場で、全体の約90%を占めています。
管理型処分場で埋め立てられる廃棄物には、汚泥、燃え殻、木くず、紙くず、動植物の死体、食品残さなどがあります。これらは水に触れると有害な物質が溶け出したり、腐敗してガスが発生したりする可能性があるため、厳重な管理が必要なんです。
管理型処分場の最大の特徴は、二重構造の「遮水工」という設備です。遮水工とは、処分場の底や側面に敷かれた防水シートのことで、廃棄物から出る水が地下に染み込まないようにする役割があります。雨水が廃棄物の間を通って集まった水を「浸出水」と呼びますが、この浸出水には有害な成分が含まれている可能性があります。
浸出水は集排水管を通って浸出水処理施設に送られ、そこで生物処理や化学処理によって浄化されます。処理された水は法律で定められた基準を満たしてから、川などに放流されるんです。このように、管理型処分場では水の管理が最も重要なポイントになります。
遮断型処分場
遮断型処分場は、有害物質を含む廃棄物を処理する特殊な施設です。ここでは、重金属などの有害物質が基準値を超えて含まれる燃え殻、汚泥、ばいじん、鉱さいなどが埋め立てられます。
遮断型処分場の構造は非常に厳重です。処分場全体が水密性の鉄筋コンクリートで覆われており、廃棄物が外部の環境と完全に隔離されています。また、雨水が処分場に入り込まないよう、屋根や覆いが設置されています。
このように厳重な構造が必要なため、遮断型処分場の建設や維持管理には多額のコストがかかります。そのため、日本国内の遮断型処分場の数は全体の約1%と非常に少ないんです。多くの場合、セメントで固めるなどの処理を行って有害物質を無害化し、管理型処分場で処分できるようにする方法が取られています。

環境を守る設備
最終処分場には、周辺環境を汚染しないための様々な設備が設置されています。これらの設備が正常に機能することで、私たちの安全な生活が守られているんです。
遮水工の役割
遮水工は、最終処分場で最も重要な設備の一つです。廃棄物から出る有害な水が地下に染み込むのを防ぐ役割を果たしています。
遮水工は通常、二重構造になっています。まず、処分場の底面に厚さ50センチメートル以上の粘土層を敷き、その上に遮水シートを敷設します。さらに安全性を高めるため、多くの処分場ではもう一枚の遮水シートを重ねた三重構造を採用しているんです。
遮水シートには、非常に水を通しにくい特殊な素材が使われています。この遮水工の透水係数は毎秒10ナノメートル以下と定められており、ほとんど水を通さない構造になっています。最近の処分場では、さらに安全性を高めるため、遮水シートの下にコンクリートを施工する例も増えています。
また、遮水工が破損していないか常に監視するため、「漏水検知システム」が導入されています。このシステムは、万が一遮水工に穴が開いた場合、すぐに検知して修理できるようになっているんです。地下水汚染を未然に防ぐための重要な安全装置といえます。
浸出水の処理
最終処分場に降った雨は、廃棄物の間を通って底部に集まります。この水を浸出水と呼び、適切に処理する必要があります。
浸出水には、廃棄物から溶け出した有機物や重金属などが含まれています。そのまま川に流すと水質汚染の原因になるため、浸出水処理施設で浄化しなければなりません。まず、処分場の底部に設置された集排水管によって浸出水を集めます。集められた浸出水は調整槽に一時的に貯められ、そこから処理施設に送られます。
浸出水処理施設では、主に生物処理と化学処理が行われます。生物処理では、微生物の力を使って有機物を分解します。その後、凝集沈殿処理や砂ろ過、活性炭吸着などの化学処理を経て、汚れを取り除いていくんです。
処理された水は、法律で定められた排水基準を満たしているか厳しくチェックされます。基準を満たした水だけが、河川などの公共水域に放流されます。大雨が降った時でも未処理の水が流れ出ないよう、大容量の調整槽を設置するなどの対策が取られています。

処分場の管理方法
最終処分場は、埋め立て中だけでなく埋め立てが終わった後も、長期間にわたって管理し続ける必要があります。環境汚染を防ぐため、様々な項目を定期的にチェックしているんです。
水質検査の実施
水質検査は最も重要な管理項目です。処分場の上流側と下流側に地下水観測用の井戸を設置し、定期的に水質を測定します。もし下流側の井戸で汚染が検出されれば、処分場から有害物質が漏れ出している可能性があるため、すぐに対策が取られます。
また、浸出水や放流水の水質も定期的に検査され、基準を満たしているか確認されます。
ガス発生の監視
ガスの発生状況も重要な管理項目です。埋め立てられた廃棄物が分解する過程で、メタンガスなどの可燃性ガスが発生することがあります。このガスが溜まると爆発の危険があるため、定期的に測定を行います。
ガスの発生が多い場合は、ガス抜き設備を設置して安全に排出します。
温度管理の重要性
処分場内部の温度管理も欠かせません。廃棄物の分解が進むと、処分場内部の温度が上昇することがあります。温度が異常に高い場合、廃棄物がまだ安定していない証拠です。
温度計を埋め込んで常時監視し、周辺の地中温度と比較して異常がないか確認しています。これらの管理データは、処分場が安全に機能しているかを判断する重要な指標になるんです。
残余年数の現状
残余年数とは、現在ある最終処分場が満杯になるまでの残り期間の推定値のことです。今ある処分場の容量と、毎年埋め立てられる廃棄物の量から計算されます。
産業廃棄物の状況
産業廃棄物の最終処分場について見てみましょう。2021年度末時点での残余容量は1.71億立方メートル、残余年数は19.7年となっています。つまり、このままのペースで廃棄物を埋め続けると、約20年後には埋める場所がなくなる計算になります。
一般廃棄物の状況
一般廃棄物の最終処分場はどうでしょうか。2022年度末時点での残余容量は9,666万立方メートル、残余年数は23.4年です。こちらも約23年後には容量が限界に達する見込みなんです。
地域差と今後の見通し
ただし、この数字には地域によって大きな差があります。都市部では特に処分場の確保が難しく、残余年数が全国平均よりも短い地域も少なくありません。一方で、リサイクルが進んでいる地域や新しい処分場が建設された地域では、残余年数が延びている例もあります。
近年は、リサイクル技術の向上やゴミの減量化により、最終処分場に運ばれる廃棄物の量は減少傾向にあります。そのため、残余年数は横ばいまたは微増の状態が続いています。しかし、新しい処分場を作ることが非常に難しい現状を考えると、決して楽観できる状況ではありません。
処分場が抱える課題
最終処分場には、様々な課題があります。これらの課題を理解することで、ゴミ問題の深刻さが見えてくるんです。
容量の限界
最大の課題は、処分場の容量に限界があることです。どんなに広い処分場でも、いつかは満杯になります。前の章で説明した通り、残り20年ほどで現在の処分場は使えなくなる計算です。新しい処分場を作れば解決するように思えますが、そう簡単ではありません。
土地確保の困難さ
土地の確保が非常に困難なんです。日本は国土が狭く、山がちな地形が多いため、適した場所を見つけるのが大変です。さらに、最終処分場の建設には、近隣住民の理解が必要不可欠です。
どんなに安全な設備を整えても、「自分の家の近くに処分場ができるのは嫌だ」という気持ちを持つ人は少なくありません。
関係者との調整
また、漁業協同組合や水利権の問題も絡んできます。処分場から出る水が万が一漏れた場合、川や海が汚染される可能性があるため、関係者全員の同意を得るのは非常に時間がかかります。
実際、新しい最終処分場の建設許可を取得することは、ほぼ不可能に近いとさえ言われています。
維持管理コスト
維持管理のコストも大きな問題です。処分場は埋め立てが終わった後も、何十年にもわたって管理し続けなければなりません。水質検査やガス測定、施設の補修など、継続的な費用が発生します。
この費用を誰が負担するのかという問題もあり、処分場を運営する事業者にとって大きな負担となっています。

埋立終了後の処分場
最終処分場は、埋め立てが終わったからといってすぐに放置できるわけではありません。廃棄物が安全に安定するまで、長期間の管理が続くんです。
廃止基準とは
埋め立てが終了した処分場を廃止するには、厳しい基準をクリアする必要があります。廃止基準は以下になります。
浸出水が排水基準
2年以上継続
ガス発生なし
内部温度が正常
浸出水の水質が2年以上にわたって排水基準を満たし続けることが第一の条件です。また、処分場内からガスの発生がほとんど認められないこと、内部の温度が周辺の地中温度と比べて異常に高くないことも確認されます。
これらの条件を満たして初めて、都道府県知事や政令市の市長から廃止の確認が下りるんです。
跡地の有効利用
廃止が認められた処分場の跡地は、様々な形で有効利用されています。広大な敷地を持つ処分場の跡地は、公園やスポーツ施設、太陽光発電施設などに生まれ変わることが多いです。
ただし、跡地利用する場合でも、地下の廃棄物に影響を与えないよう、慎重に計画を立てる必要があります。
長期的な管理
しかし、完全に廃止された後も、定期的な点検は続きます。何十年も経ってから問題が発生する可能性もゼロではないため、長期的な視点での管理が求められます。このように、最終処分場は私たちの世代だけでなく、次の世代、その次の世代まで影響を与え続ける施設なんです。
私たちにできること
最終処分場の問題は、決して他人事ではありません。私たち一人ひとりの行動が、処分場の寿命を延ばすことにつながります。
3Rの実践
最も効果的なのは、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の実践です。リデュースとは、ゴミそのものを減らすことです。必要以上に物を買わない、過剰包装を断る、マイバッグやマイボトルを使うなど、日常生活でできることはたくさんあります。
食品ロスを減らすことも重要です。買いすぎや作りすぎに注意し、食べ物を無駄にしないよう心がけましょう。
正しいゴミの分別
リユースは、物を繰り返し使うことです。まだ使える物を簡単に捨てず、修理したり誰かに譲ったりすることで、ゴミの量を減らせます。フリーマーケットアプリやリサイクルショップを活用するのも良い方法です。詰め替え容器を使用したり、レンタルサービスを利用したりするのも、リユースの一つといえます。
リサイクル製品の選択
リサイクルでは、正しいゴミの分別が何より大切です。各市区町村のルールに従って、きちんと分別することで、リサイクル率が向上します。ペットボトルのラベルを剥がす、容器を洗ってから出すなど、ちょっとした手間がリサイクルの質を高めるんです。また、買い物の際にリサイクル製品を選ぶことも、循環型社会を作る大きな一歩になります。
これらの取り組みは、一人がやっても効果は小さいかもしれません。しかし、多くの人が意識を変えて行動すれば、最終処分場の残余年数を大きく延ばすことができます。次の世代に美しい地球を残すため、今日からできることを始めてみませんか。
まとめ
最終処分場は、私たちの生活を支える重要な施設です。安定型、管理型、遮断型という3つの種類があり、廃棄物の性質に応じて使い分けられています。遮水工や浸出水処理施設などの設備により、環境汚染を防ぎながら廃棄物を安全に保管しているんです。
しかし、残余年数は約20年と、決して余裕のある状況ではありません。新しい処分場を作ることも難しい中、私たち一人ひとりがゴミを減らす努力をすることが何より大切です。3Rを実践し、正しく分別することで、限りある処分場を長く使い続けることができます。未来の子どもたちが困らないよう、今日から行動を始めましょう。あなたの小さな一歩が、大きな変化につながります。

